社会経済史学
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中世西日本における使用升の容積と標準升
水鳥川 和夫
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2011 年 76 巻 4 号 p. 525-545

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抄録

本論文では前稿における畿内に引き続き,中世西日本における使用升の容積と事実上の標準升を明らかにしようとするものである。升の容積は,農業生産力,土地制度,交易条件などを明らかにするための基本であるが,その重要性は十分に理解されているとはいえない。事実上の標準升を明らかにすることにより,市場の統合過程をよりよく理解することができるであろう。15世紀,西日本のうち西部地域では讃岐斗が標準升であり,東部地域では売升が市場升として使われていたが,同時に畿内本斗も標準的に使われていた。畿内本斗は讃岐斗とほとんど同じ容積であったので,西日本及び畿内において事実上の標準升が存在した。16世紀,売升は隣接地域に拡大し,標準升となったが,16世紀末になると西日本及び畿内では畿内本斗または讃岐斗が再び標準升となった。これは政治的統合に起因して市場統合がなされたことによるものと考えられる。

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© 2011 社会経済史学会
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