社会経済史学
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1919~1929年における北部イタリア「絹織物業」の輸出拡大
日野 真紀子
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2012 年 78 巻 1 号 p. 3-24

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抄録

本稿は,統一以来イタリア工業をリードしてきた北部「工業三角地帯」に位置するコモ地方の絹織物業(人絹を含む)をあつかう。イタリア繊維工業は,中小企業が多数を占める戦間期イタリア工業の中心である。絹織物業が1920年代前半に国際競争力を得るに至った過程を,その輸出拡大に焦点を当てて検討し,以下のような事実を明らかにする。背景として,コモ地方絹織物企業の経営組織の近代化が確認される。同時に,これらの企業は織布関連産業を巻き込みつつ,織物業の製品・生産方法の開発・改良,新販路の開拓という形で展開した。また,新しい原材料である人絹糸が絹織物業の主要原材料となり,新製品として「交織」大衆商品が製造され,主に産地の大企業がこれを担った。一方,産地の中小企業と政府が協力することで,産地は高級絹織物のデザインを改良しつつ,イタリアからの流行発信を試みた。大衆商品の輸出市場は,1925年のイギリスの保護関税を契機に,従来のヨーロッパ市場からアジア,アフリカ,南アメリカのような非ヨーロッパ圏に求めるようになり,1927年以降顕著に増加した。

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