生活衛生
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環境汚染物質による生体影響
大気中浮遊粒子状物質の毒性について
福田 正則
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1983 年 27 巻 5 号 p. 264-270

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抄録

SPMの水に可溶な成分について, その毒性をTetrahymenaの細胞数の変化とによって調べ, 次の結果を得た。
1. 工業地区と住宅地区では工業地区のSPMによって最も強くTetrahymenaの生長が阻害された。しかし汚染物質の濃度と毒性の強さを示す指標である細胞数の増減の変化との間には必ずしも比例関係が見い出されず, 単に濃度で毒性を論じることは適当ではなかった。また, SPMの季節の差異は毒性の強さに関係しなかった。
2. SPMの抽出液中の有機物濃度とTetrahymenaの細胞数の関係も有機質濃度のみでは説明出来なかった。抽出液中の重金属, カドミウム, 銅, マンガンの濃度は毒性を問題とするほど高くはなかった。
3. SPMの抽出物をセファデックスカラムにより分画し, 各画分について毒性試験をおこなったところ, 比較的低分子量の画分で細胞数が少なかった。またTOC濃度のピークを中心に画分を合算しておこなった同様な試験でも, やはり低分子量画分で細胞数が少なかった。これらの画分は硝酸イオンに富んでおり, それらと毒性の関係が注目された。

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