生活衛生
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脳梗塞発生に及ぼす労働状況の影響
馬場 昭美
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1983 年 27 巻 6 号 p. 324-340

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抄録

労作強度や労働時間などの労働状況と脳卒中発隼との関連性を追究するために, 近年における労働状況と脳卒中発生率の経年推移を cross-sectional study により検討し, さらに両者の因果を推理するために, prospective study を実施した。対象は脳卒中多発の新潟県A-I地区と対照の大阪府C-A地区である。1977年と1982年の労働状況の変化を検討したところ, A-I地区では労働状況の変化が大きく, しかも軽減された。このことがA-I地区における脳卒中発生率を顕著に低下させたと考えられた。
両地区在住の40歳以上の男女に労働状況調査を実施し非脳卒中者を観察コホートとして5年6ヶ月追跡した。人・年法標準化発生比 (SIR) を尺度にして, 労働状況と脳梗塞SIRとの関係を検討した。(1) 労働状況と脳梗塞SIRとのの間には dose-response relationship が認められた。(2) 高血圧に労働状況のきびしさが加わると脳梗塞SIRが一段と高くなることが認められた。多重ロジスティックモデルを応用して, 性, 年齢, 血圧, 栄養摂取状態を考慮に入れると, 脳梗塞の発生には年齢と血圧が強く作用しているために, 労働状況と脳梗塞との関連性が相対的に弱くなるような結果となった。以上の成績より, 脳梗塞発生予防のためには, 高血圧の管理に加えて, 労働状況の軽減も重要であると考えられた。

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