2017 年 24 巻 1 号 p. 93-98
本研究では,先ず,福島県における戦後の高度経済成長の状況を把握するために,文部科学省から公表されている各都道府県の体格データに基づいて,福島県の1955年から2015年までの小学1年から高校3年までの身長の横断的発育データを抽出し,さらに,これら経年的な発育データをコーホート的に設定し直し,そのコーホート的発育データに対してウェーブレット補間モデルを適用した.そして記述された速度曲線から身長のMPV年齢を特定し,その年齢の経年的変化傾向を解析した.次に,震災の影響が確認された地域の小学1年から中学生3年までの身長の縦断的発育データに対してウェーブレット補間モデルを適用し,個々に身長のMPV年齢を特定した.特定された個々人のMPV年齢の統計値から成熟度の評価基準を構築し,震災前の評価基準として身体Catch-upモデルの構築理論の核とした.そして,近年勃発した東日本大震災が身長のMPV年齢の挙動から短期間に身体的Catch-upが起きるか模索するための基礎的な理論的背景を探り,震災による生物学的パラメーターのリスク分析を試みるものである.