2024 年 31 巻 1 号 p. 81-86
企業等の健康診断においては,身長と体重から簡便に求められるBMIにより3体格(痩せ,標準,肥満)の判定は行われるが,標準体格にもかかわらず体脂肪率が高い状態にある隠れ肥満の判定は難しい.近年,日本の若年成人女性の痩せ志向が高じて,20歳代の痩せの割合が高い傾向にあるが,関連してその年代の隠れ肥満の割合も高いことが報告されている.隠れ肥満は,肥満と同様に重篤な疾病とのかかわりが深いことや,標準体格と比べて相対的に筋肉量が少ないことから,加齢に伴う筋肉量の減少とあわせて,将来はサルコペニアのリスクが高まることが示されている.また,体力面の課題として,あらゆる体力要素で標準と比べて有意に低値を示し,その要因として,筋肉量や体脂肪量といった身体組成の差異が影響を及ぼしていることが指摘されている.近年,女性の社会進出が増えつつあるなか,企業等においては,従業員の健康の維持増進の観点からそれらへの対策は重要な事柄となろう.本研究では,内藤ら(2022)による隠れ肥満の判定基準を採用し,若年成人女性の隠れ肥満の各種体力的な特徴を明らかにすることとした.