2014 年 1 巻 3 号 p. 54-55
サービスの本質を価値共創と捉え,サービスを交換の基本原理とするサービスドミナントロジック (Service-Dominant Logic)を基礎に,サービスシステムに関する研究がサービスサイエンスを含む多くの研究領域で進められている.
社会の高度化・成熟化の進行に伴う経済のサービス化より,デザインの対象がハードからソフトへ,モノからサービスへ,プロダクトからシステムへ拡大してきた.サービスイノベーションのシステマティックな創出を目指し,物理的なモノだけではなく,サービスインタラクション,サービスシステムをデザインの対象とする新しいデザイン領域である「サービスデザイン」が急激に立ち上がってきた.本SIGでICServ2014において実施したサービスデザインワークショップ(Chair: Birgit Mager, Stephen Kwan, Yuriko Sawatani, Yutaka Yamauchi)およびパネルセッション(テーマ Service design: Challenges and Future Research Moderator: Yuriko Sawatani Panelist: Takashi Maeno, Birgit Mager, Masanao Takeyama, Yutaka Yamauchi)について報告する.
ワークショップでは,まず,参加者全員からサービスデザインの重要な研究領域について紹介が行われた.引き続き,Mager教授(University of Applied Sciences, Cologne, Germany)からサービスデザイン研究の優先順位と題して講演が行われた.その後,参加者が4チームに分かれてサービスデザインの研究領域について議論し,その俯瞰図を共有した.
Mager教授より,先進的なサービスデザインの研究領域に関する調査の紹介が行われた.まず,Journal of Service Researchで2010年に発表されたサービスサイエンス研究のプライオリティ(2)の中で,サービスデザインが言及され,初めてデザイン以外の他の分野で認知された.また,英国のDesign CouncilのレポートService Design Scoping Studyにおいて,ビジネスインパクのある事例,サービスデザインの評価および教育の重要性が指摘されていることが紹介された.最近行われたサービスデザインラウンドテーブルでは,今後一層のサービスサイエンスコミュニティとのコラボレーション,アカデミアと実践のギャップを埋めていく事,教育プログラムの創出,サービスデザインの実践と研究の強化の必要性が示唆されたということである.
2.2 サービスデザイン俯瞰図以下にワークショップで議論されたサービスデザインの俯瞰図を紹介する.
サービスデザイン教育,実践とそれを支援するプラットフォームの必要性,もう一方のチームからはサービスシステムのデザインにおいて,重要な領域において情報技術が基礎になっていることが指摘された.
パネルセッションでは,各パネリストから重要なサービスデザインの研究領域の紹介があった(図3参照).議論では,サービスデザインにおいて人間中心のサービスシステムをデザインする事,その多様な視点での評価の重要性,そのためのアプローチとしてマルチディシプリン,アカデミアとプラクティスのコラボレーションの必要性が指摘された.最後に,サービスデザインにおけるスキルについて会場から質問があり,「人と共に創造している精神」ではないかとMager教授から回答.これで2日間に渡る議論が終了した.
東京工業大学大学院システム科学専攻(修士),東京大学大学院技術経営(博士).(株)日本IBM入社.2004年以降,サービスサイエンス研究に従事.2013年より早稲田大学教授.【専門分野】R&Dマネジメント,技術経営,サービスイノベーション,サービスデザイン.