サービソロジー
Online ISSN : 2423-916X
Print ISSN : 2188-5362
SIG報告
グランドチャレンジワークショップ2014から生まれた2つのSIG(Special Interest Group)
原 辰徳
著者情報
ジャーナル オープンアクセス HTML

2015 年 1 巻 4 号 p. 76-77

詳細

今回は,第2回国内大会(函館)の前日4月27日(日)に行われたグランドチャレンジワークショップ(サービス学が取り組むべきグランドチャレンジを提案しディスカッションする)にて採択された2件の提案を紹介します.これらの提案は,すでに本誌でも取り上げた4件のSIGに加え,グランドチャレンジの実施に向けた準備を行うSIGとして設置され,現在活動中です.

なお,第3回国内大会(金沢)の前日に開催される第2回グランドチャレンジワークショップの内容については,本誌の会告記事をご覧ください.

1. 既存のSIG

4件のSIGは,2013年度より活発に活動中です.

2. グランドチャレンジから生まれたSIG

以下2件のSIGは,グランドチャレンジの実施に向けた準備を行うSIGとして2014年に設置され,現在活動中です.ここでは,SIG申請時に計画されていた活動内容について,ご紹介致します.

(1) サービス・ケイパビリティ(原 良憲)

  • 目的:

本SIGは,サービス・ケイパビリティに関する研究を行うことを目的とする.近年ケイパビリティに関する研究は,経営戦略,情報システム等の学際領域でホットなトピックスとなっている.サービス学におけるコンテクストで議論を行う場として,本SIGを提案する.ここで,サービス・ケイパビリティとは,提供者・利用者を含む多様な利害関係者,内部資源,外部資源, 環境・コンテクスト等をうまく結びつけ活用する能力である.サービス資源は有限で,制約(トレード・オフ)があり,要素還元的ではない.しかし,現時点で,適切なフレームワークや評価手法がなく,研究開発の進展が望まれている領域である.

我々は,サービス・ケイパビリティに基づく多様な関係性の構築・推進の中で価値が創出され,多様な価値評価の規定のもとでその価値が獲得されるという考え方のもとに,活動を進める.この活動は,サービス全てにあてはまり,サービス・ケイパビリティの明確化は,サービス・フレームワーク研究の重要なチャレンジである.また,産業界の事例に照らし合わせて,産官学連携の検証活動も行う.

  • 予期される成果:

サービス・ケイパビリティに関する概念の明確化,事例分析とその応用展開

  • 年度事業計画,実施方針:

第1回グランドチャレンジワークショップ「サービス学のフレームワーク」の討議結果をもとに,活動を進める.2014年度後期は,SIGの立ち上げ・方向付けを念頭に,本学会研究会を開催するとともに,産官学連携協議会などでのフィードバックを得る.得られた結果は,第3回サービス学会国内大会で発表を行う.

(2) 製造業のサービス化(持丸正明)

  • 目的:

日本の製造業が,製品のコモディティ化とそれに伴う低価格化に苦悩している.一方で,産業,雇用,消費の3側面で「サービス化」は着実に進展しており,製造業においても,高い付加価値と収益性の確保,国際競争力の強化の観点から,ものづくりとサービスを融合させた価値提供ビジネスへの移行が求められている.しかしながら,製造業がサービス化すると言うことはどういうことなのか,価値の提供形態や収益構造などに明確な定義がない.それ故,各社の特徴を活かしつつサービス化を推進する場合,どのような形態・構造を目標に据えれば良いのか,また,目標を定めた上でどのような技術や方法論が利用可能であるのかが整理されていない.本SIGでは,すでに学術的に提案されている製造業のサービス化(Servitization, Servicization)のモデルを初期仮説として議論を進め,製造業のサービス化の事例を説明でき,かつ,サービス化の方策(適用可能な技術,手法),達成指標(サービス化の進捗度合い,経済的効果,非経済的効果)を整理しうる (a)「製造業のサービス化モデル」を構築する.(b)さらに,サービス化の類型に応じて,そのサービス化シナリオ実現に有用な技術,手法をリストアップするとともに,それらの技術,手法の研究の評価尺度を議論し,グランドチャレンジの課題としてとりまとめる.(c)必要に応じて,(b)の遂行に役立つデータ等の整備を行う.当面,(a)の研究を進める.

  • 予期される成果:

製造業のサービス化の事例を説明でき,サービス化の方策や達成指標の整理に役立つ「製造業のサービス化モデル(案)」の提示

  • 年度事業計画,実施方針:

SIGは,少人数で企業のヒアリングを実際に行う招へい型のWGと,自由参加のSIG本体の二部構成とする.SIG-WGは,月1回のペースで会合を開き,企業ヒアリングを実施する.この際,SIG-WGとしてヒアリング先の企業と秘密保持契約を結び,企業のサービス化事例について,経営側面も含めてできるだけ具体的に情報を提供いただく.これらの事例をベースに「製造業のサービス化モデル(WG案)」を整理する.WGは4月までに1〜2回程度開催し,SIG-WGからの活動報告とともに,メンバーからの研究発表を行い,SIGとしての製造業のサービス化モデル(案)」をとりまとめる.とりまとめた成果は,2015年4月に開催される第3回国内大会(金沢)での「グランドチャレンジワークショップ(第2回)」において発表する.

図1 製造業のサービス化の枠組み(グランドチャレンジ審査における発表資料より引用)

 

  • ◆サービス学会ではSIG活動を募集しています.

SIGを発足されたい方,設置済みのSIGへの参加を希望される学会員の方は,学会Webサイトよりお申し込みください.意欲的なご参加をお待ちしております.

http://ja.serviceology.org/introduction/

〔原 辰徳 (東京大学)〕

 
© 2018 Society for Serviceology
feedback
Top