サービソロジー
Online ISSN : 2423-916X
Print ISSN : 2188-5362
会議報告
IEEE International Conference on Data Mining 2014 (ICDM 2014)
平石 邦彦
著者情報
ジャーナル オープンアクセス HTML

2015 年 2 巻 1 号 p. 56-57

詳細

1. 会議概要

2014年12月14~17日に中国・深センで国際会議IEEE International Conference on Data Mining (ICDM2014)が開催された.

報告者はデータマイニングを専門とするわけではないが,ここ数年,介護サービス現場におけるスタッフの行動モデルについて興味を持っており,データマイニング分野の最新の研究動向を調査する目的で本会議に参加した.

なお,報告者の都合により12/14夕方の成田発便で香港入りし,12/15に香港から深センに移動,また,帰りも12/17香港発の夜行便だったため,初日のワークショップ,および,本会議の最初と最後のセッションは参加していない.

国際会議ICDMは,データマイニング分野ではACM主催の International Conference on Knowledge Discovery and Data Mining (KDD)と並び主要な会議の1つであり,毎年11月または12月に開催されている.会議の趣旨,運営委員会の構成,過去の開催地などについてはICDMのホームページ(http://www.cs.uvm.edu/~icdm/)を参照されたい.

会議はインターコンチネンタル深センで行われた.4日間の会期のうち,初日はワークショップと学生間の意見交換を目的としたPhD フォーラムが開催されるため,本会議は3日間である.3件のキーノートスピーチがあり,一般発表は3パラレルセッション+1チュートリアルセッションの形で行われた.各セッションは,前半はregular paperの発表(1件20分),後半はshort paperの発表(1件10分)で構成されている.論文投稿数は727件(44か国)であり, regular paper 採択は71件(採択率9.8%),short paper採択は72件,トータルの採択率は19.8%で非常にコンペティティブである.また,投稿論文の57%は学生が筆頭著者であり,実際,PhDコースの学生の発表が多かった.参加者については,開催地の中国からの学生が多く,会議自体は非常に活気が感じられた.データマイニングの会議らしく,論文投稿に関する統計情報を解析した結果が上記のICDMホームページで閲覧できる.

写真1 会議受付

2. 会議の内容

2つのキーノートスピーチ,3つのチュートリアル,2つの一般セッションを聴講した.以下のその概略について述べる.見当はずれな説明があるかもしれないが,専門外ということでお許しいただきたい.

写真2 キーノートスピーチの会場

  • •   キーノートスピーチ:Towards Mobile Visual Search by Prof. Wen Gao (Peking University)

Baidu Eye(グーグルグラスと似たようなデバイス)を用いて,現在見ているものに関する様々な情報(たとえば昆虫や植物ならその種類など)をリアルタイムにデバイス上に表示する機能を実現するための技術についての講演である.画像データを直接サーバーに送るのではなく,モバイルデバイス上で対象の持つ特徴量をコンパクトな情報に集約する技術について説明していた.

  • •   キーノートスピーチ:Understanding Global Change: Opportunities and Challenges for Data Driven Research by Prof. Vipin Kumar (University of Minnesota)

気候変動のモニタリングや予測にデータドリブンの手法を用いるという講演で,講演者らが提唱するTheory-guided Data Miningについての内容が中心だった.これは,ドメイン依存のTheory(たとえば物理法則など)をデータマイニングに利用するもので,物理的に実現不可能な可能性を排除することでノイズを軽減するなどに役だつ.最近IEEE Computer Societyの雑誌 Computerに解説記事が掲載された.J. H. Faghmous et al., Theory-Guided Data Science for Climate Change, Computer, Issue No.11 - Nov. (2014 vol.47) pp. 74-78.

  • •   チュートリアル:Social Multimedia as Sensors by Jiebo Luo (University of Rochester), Tao Mei (Microsoft research)

ソーシャルマルチメディアをセンサーにするという内容の講演である.たとえば写真共有サイトのFlickrにおいて,投稿された写真からユーザープロファイルを推定したり,また,写真から建物を特定してそれらの時系列より(たとえ位置情報を提供しなくても)ユーザーの行動パターンを推定できてしまう.選挙において,映っている支援者の写真の表情から感情を読み取り,それを用いて選挙結果を予測した事例についても紹介していた.

  • •   チュートリアル:Node and Graph Similarity: Theory and Applications by Danai Koutra (Carnegie Mellon University), Tina Eliassi-Rad (Rutgers University), Christos Faloutsos (Carnegie Mellon University)

SNSにおけるユーザーのつながりなど,グラフによりオブジェクトどうしの関係を表現し,その上で様々な情報を抽出するという研究が行われている.このチュートリアルでは,グラフの類似性について様々な定義の比較や計算アルゴリズムについての説明があった.非常に大規模なグラフが対象であるだけに,アルゴリズムの計算量は重要である.グラフ理論は報告者にとってはなじみのある分野であるだけに,興味深い内容だった.

  • •   チュートリアル:Finding Repeated Structure in Time Series: Algorithms and Applications by Abdullah Mueen (University of New Mexico), Eamonn Keogh (University of California Riverside)

時系列データから含まれる繰り返し構造を発見するための方法についての講演である.繰り返し構造はmotifとよばれる時系列中に現れる短いパターンであり,行動の認識や異常検知に利用できる.従来の信号処理的アプローチと異なり,短いパターンに着目したところが新しいアイデアのように思える.

  • •   セッション:Graphs IIおよびAnomalies and applicationsを聴講した.

写真3 コーヒーブレイクの様子

3. 今後の会議予定

次回のICDMは2015年11月14~17日に米国アトランタで開催される.(http://icdm2015.stonybrook.edu/)

〔平石邦彦(北陸先端科学技術大学院大学)〕

 
© 2018 Society for Serviceology
feedback
Top