サービソロジー
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会議報告
JST RISTEX S3FIRE第5回フォーラム
中島 正人
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2015 年 2 巻 1 号 p. 58-59

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1. はじめに

JST RISTEX問題解決型サービス科学研究開発プログラム(S3FIRE)は,日本発のサービス研究開発としてサービスにおける具体的な問題を解決する技術や方法論を開発するとともに,サービス科学の基盤を構築すること,さらに研究開発コミュニティを形成することを目的として活動している.

毎年秋にフォーラムを開催し,一般の方々に向け,プログラムおよび採択されたプロジェクトの活動状況および成果などの情報を広く発信している.

【S3FIREフォーラムの目的】

  • •   採択プロジェクトの情報や取り組み状況を社会に発信し,広く一般からの意見を聴取する.
  • •   プログラムの活動に広く関心を集め,成果の展開のためのネットワーキングを図る.
  • •   サービスイノベーション事例を紹介し,研究課題や取り組み方について理解を深める.
  • •   パネルディスカッションによりサービス科学の研究基盤をいかに構築していくか,成果をいかに社会実装していくか,について議論する.

2. フォーラム概要

5回目の開催となった今回のフォーラムは2014年11月4日に東京コンファレンスセンター・品川にて開催され,155名の方にご参加いただいた.本年は第2回目(平成23年度)の提案募集で採択されたプロジェクトの成果報告も兼ね,午前と午後の2部体制で実施された.今回のフォーラムでは「サービス科学はサービスの科学なのか?―価値創造への取り組み―」とやや刺激的なテーマを設定し,現状のサービス科学がどこまで到達したのか,今後のサービス科学がどのように進めば良いかについて,参加されたみなさまとともに考えていくことを目指した.

基調講演,採択プロジェクトによる活動進捗報告,終了報告,ポスターセッション,パネルディスカッションなどが行われた.

3. 基調講演

サービスイノベーション事例について西武信用金庫落合寛司 理事長に「地域金融機関における地域社会の価値共創」とのタイトルでご講演いただいた.成熟社会の現状と課題について提起され,西武信用金庫で取り組まれている地域共創の対応とその結果などについてご紹介いただいた.また,今後の地域共創における重点施策の例についてもご紹介いただいた.落合氏は,成熟社会の課題解決には外部経営資源の活用が重要であることを述べ,地域における課題解決が地域共創の決め手であることを訴えられた.

本プログラムアドバイザーである山本昭二教授(関西学院大学)よりサービス研究動向に関する講演「サービス経済が映し出す未来と現実」が行われた.21世紀のマーケティングのあり方として,従来の店舗,メディアではなく独占的な地位を継続的に占めることができるシステムとなるプラットフォームを確保することの重要性について述べられた.また,我が国のサービス経済が目指すべき方向性として,グローバルに展開する端緒を自ら掴む,圧倒的な製品の品質で市場を作り出すなど,新しい論理の必要性を訴えられた.

写真1 基調講演:落合寛司理事長(左),山本昭二教授(右)

4. プロジェクト成果報告

平成26年9月末日をもって,平成23年度に採択された4つのプロジェクトが3年間の研究開発期間を終了した.プロジェクトの研究代表者より,各プロジェクトのこれまでの活動内容とその成果について報告を行った(表1参照:講演者と講演タイトル).

表1 講演者と講演タイトル

5 プロジェクト活動進捗報告

本プログラムにおける最後の公募となった平成25年度に採択された3つのプロジェクトより現在遂行されている研究開発の進捗状況の報告を行った(表1参照:講演者と講演タイトル).

6. ポスターセッション

プロジェクトの活動について,より詳しく理解していただくため,全てのプロジェクトによるポスターセッションが行われた.ポスターセッションでは,実際に開発したシステムのデモンストレーションなども行われ,一般の参加者たちとの活発な意見交換が行われた.

写真2 ポスターセッションの様子

7. パネルディスカッション

本プログラムにおいてプログラム総括補佐を務めていただいている新井民夫教授(芝浦工大/サービス学会長)をモデレータとし,プログラムアドバイザーの水流聡子教授(東京大学),H23年度PJ研究代表者4名(飯田俊彰准教授,石田亨教授,小林潔司教授,藤村和宏教授)にご登壇いただき,フォーラムテーマである「サービス科学はサービスの科学なのか?」について議論いただいた.事前に討議テーマをパネリストにお伝えした際には,数件の問い合わせがあり,パネリストを大いに悩ませるテーマ設定であったと思われる.実際の議論では,サイエンスとしての再現性の保証,プロセスモデルを含むモデルの構築,情報学によるメタファー,科学とアート,実践科学,PDCAを誰が回すか,世の中に役立つ部分を客観的,科学的にやっていくところに価値がある,など様々な意見が出され,活発な議論となった.

写真3 パネルディスカッションの様子

8. おわりに(次回開催について)

2015年秋には第6回S3FIREフォーラムを開催予定である.フォーラムに関する情報は,以下のホームページ(http://www.ristex.jp/servicescience/)にて告知するので,ぜひご確認いただきたい.日本で最初のサービス科学研究開発プログラムであるS3FIREもH28年度に終了を迎える.すでに半数のプロジェクトが研究開発を終え,その成果は学術だけでなく,社会へと広まりつつある.今後はプログラムの目的であるサービス科学の基盤構築に向けて,まとめの段階へと進む.プログラムの成果を楽しみにお待ちいただくとともに, 2015年度のフォーラムにぜひご参加いただければと考えている.本プログラムの取り組みを知っていただき,サービス科学について,みなさまとともに大いに議論できれば幸いである.

〔中島正人(科学技術振興機構)〕

 
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