サービソロジー
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特集:RISTEX 「問題解決型サービス科学研究開発プログラム」(3)
気づきを用いたサービスモデルに関する検討(介護を事例に)
神成 淳司福田 亮子村井 純
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2016 年 3 巻 2 号 p. 24-30

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1. はじめに

本稿は,超高齢化社会到来により世界的に重要度を増す福祉分野の介護サービスを対象とした新たなサービス評価モデルを提案する.超高齢化社会の到来に伴う介護サービスの拡充が求められている.日本国内に限った議論においても,平均寿命の延伸に伴う要介護高齢者の増加により,介護サービスの担い手となる介護者は,今後10年間で,現行の150万人から200万人へと最低でも50万人程度の増加が必要とされ,この人員増加に伴う介護サービスの質的低下が懸念される.

一方で,現行の福祉分野の制度は,介護サービスの質的低下を抑制する,あるいは質的向上を促進することが難しい設計となっている.これは,福祉分野においては,介護者の生産性や提供されるサービスの質と,介護サービスによって事業者が得られる事業収入とに相関性が存在しないことに起因する.介護事業者の事業収入は,介護保険に基づき,利用者の要介護度に応じて定められた金額によって決定される.介護者の経験年数や提供される介護サービスの質等は一切考慮されていない.介護者が経験を重ね,よりよい介護サービスを提供しても,それが事業者側の収益増につながらないため,介護者への賃金増へもつながりにくい.サービス向上に伴うインセンティブ設計が全くなされていないのである.誰もが得をしない現状を踏まえ,介護サービスの質的低下を食い止めるための新たな枠組みが必要とされている.

この状況を踏まえ,我々は,介護サービスを対象にサービスサイエンスの知見を適用し,今後の福祉分野の中長期的な持続につながる取り組みの検討を進めてきた.具体的には,介護サービスの外形評価とその評価に基づくサービス向上に関する検討である(神成・福田 2013(4),神成 他 2015(5),Fukuda et al. 2016(1),神成 他2016(6)).ここで外形評価とは,生産性と質の2つを指す.介護保険を所管する厚生労働省においても,介護サービスの質的低下については懸念を示しており,既に様々な検討が進められてきたが,質を評価する仕組みが存在せず具体的な手立てを打てなかった.本稿では,我々が提唱する新たなサービスモデルの概要をまとめると共に,国内介護事業者における取り組みを踏まえ,提唱したモデルの有用性について,特に外形評価とそのサービス向上に関する点を中心に検討する.

2. 気づきに基づくサービスモデル

昨今のサービス研究においては,従来の貨幣等のモノを媒介とした経済モデルに代わり,VargoとLuschが提唱した,サービスの送り手側と受け手側の価値共創モデルであるService Dominant Logicが着目され,様々な検討が進められている.これは,サービスの送り手がサービスにより利用価値を提供し,サービスの受け手はサービスの送り手を評価し交換価値を提供するというモデルである(Vargo and Lusch 2004(2), Vargo et al. 2008(3)).このモデルにおいて,サービスの送り手が,提供するサービス内容を決定し,提供結果からフィードバックを得て価値共創的プロセスを再帰的に展開するために必須な「受け手からの情報」には,2つの種類がある.1つは,言語的,intentionally,狭義の事前期待が顕在化しているなどの属性を持つ情報であり,もう1つは,非言語的,unintentionally,狭義の事前期待が潜在的である属性を持つ情報である.介護サービスにおいては,サービスの受け手である利用者の多くは高齢者であり,要介護度が高い(多くの場合,認知症が進んでいる)方も多く含まれていることから,事前期待の顕在化が困難である場合が多く,事前期待は潜在的であると考えられる.我々は,このように従来の価値共創モデルのうち,特に送り手側の主観的な状態把握能力がサービスの質の決定に支配的である分野における新しい質の評価手法を確立するために,介護サービスに注目した.具体的には,我々が提案する新しいサービスの質の評価手法では,従来サービスの評価に用いられてきたサービスの受け手からの客観的な評価に代わり,サービスの送り手側の「気づき」(サービスの受け手の状態の把握)という主観的データを,複数人を対象として一定規模集約し,それらを用いることによりサービスの価値を評価する.介護サービスは日常生活支援が主体であり,利用者個々人の過去の経験やその日の体調等に即した状況依存性の高いサービス提供が求められる.そのためには,利用者の状態を介護者が的確に外形評価することが重要であり,この「気づき」(サービスの受け手の状態の把握)に基づき,送り手側がサービス提供に関する意思決定を行う.

図1は,この「気づき」に基づく行動決定の過程を概略的に示したものである.従来の考え方に基づくと,介護における行為は,介護知識に基づいた判断によって実施すべき行為が決定されるというものであり,そこにはサービスの受け手側からの事前期待等が一切考慮されていない.一方,我々の捉え方は,介護分野における事前期待が潜在的であることを踏まえ,潜在的な事前期待をサービスプロセスに気づきという形で取り入れた意思決定モデルである.

図1 気づきに基づく行動決定過程

図2は,この「気づき」を踏まえ,本稿が提唱するサービスモデルである.介護現場では,利用者の事前期待を,人間としての尊厳の守られた健康で平穏な生活の維持とし,利用者からのリターンを,利用者が平穏であること,状態が良いと「観察される」ことと位置付けることが多い.この場合,サービスの受け手側である利用者の事前期待の把握も,サービスの結果に対する顧客からのフィードバック(評価)も,サービスの送り手である介護者自身の,利用者の状態に関する主観的な「気づき」に依存する.そのため,送り手に対する評価や学習が,効果的にフィードバックされないという課題も存在する.本稿では,この潜在的な事前期待に関するサービスモデルを提唱し,それをサービスの評価が送り手側の主観的な判断に委ねられる類型に属するサービスの評価に用いている.このモデルは,現状の介護報酬が,サービスの「質」に基づくものに改正されるための根拠を与えるものとして期待される.

図2 潜在的な事前期待におけるサービスモデル

3. 介護分野への本稿モデルの適用

図2に示すサービスモデルを用い,具体的なサービスの評価手法に関する検討を,介護分野の就業者数,並びに利用者の延べ利用時間の双方が最大となるサービス領域であるユニットケアを対象に実施した.ユニットケアとは,利用者10名程度と介護者5名程度を1ユニットとし,介護施設内にて24時間ケアを行うもので,日中はデイルームと呼ばれる共用空間での介護が,夜間はそれぞれの居室での介護が提供される.図3に取り組みの全体像を示す.

図3 取り組みの全体像

介護者は,介護サービス提供中に携帯端末を所持し,気づきデータを業務の合間に入力する.

気づきデータには,「いつ(時間=自動的に入力),どこで(場所),誰が(介護者),誰の(利用者),どのような行動や様子に気づいたり働きかけたりしたか(気づき項目),その時の状態はどうだったか(評価値)」の各要素が含まれる.このうち,気づき項目は,介護現場において介護サービスの評価に用いられてきた認知症ケアマッピング(Dementia Care Mapping)の評価項目分類をベースに,過去の介護記録の自由記述欄からのキーワード抽出とプロジェクト実証期間内での分析に基づき,表1に示す21項目を設定した.また,評価値は,「とても悪い」「悪い」「普通」「良い」「とても良い」の5段階である.特に,評価値「普通」は,利用者が通常と変らないことを示すものであるが,この値の入力状況は,利用者の状態がいつもと異なることが把握された際,それが何時から始まったものであるかを判断する重要な因子である.

表1 気づき項目
分類 説明 項目
行動 利用者のしている行動(介護者の介助による行動を含む)に関する項目 介助,食事,入浴,排泄,睡眠,歩行,車いす,身支度,情報,交流,仕事,楽しみ,独り言
気づき 利用者の様子が気になったときに記録する項目 表情,仕草,声,意欲
働きかけ 利用者の状態を把握するため能動的な働きかけをしたときに記録する項目 声かけ,触れる,思い出
洞察 利用者の状態をより深く考察し,何らかの判断に至った場合に記録する項目 洞察

4. 実証評価

4.1 実証の概要

鳥取と東京に位置する2法人4施設を対象とし,2013年6月から2015年8月にかけて図3に示す取り組みの実証を実施した.実証には延べ187名の介護者が参加した.状態把握の対象となった利用者は延べ292名にのぼる.実証では,勤務中の全ての介護者が携帯端末を所持し,逐次データ入力を図る環境を整備している.また,データ閲覧を促す仕組みとしては,忙しい介護現場では介護業務の見直しや,収集した「気づきデータ」を閲覧・確認することが滞りがちとなる状況が生じることが多いことを踏まえ,気づきデータに基づく業務内容の見直しを介護業務全体のフローの中に位置付けることとした.具体的には,毎月各ユニットで実施されるユニット会の議事に,気づきデータを基にした議論を必ず組み込むこととし,収集した気づきデータを用い,以下の内容をグラフ化して提供した.

  • ●   各介護者の勤務日ごとの項目別記録件数,評価値別記録件数,利用者の内訳,場所別の記録件数(「介護者×日変動」)
  • ●   介護者ごとの各項目の記録件数・割合(「介護者×項目」)
  • ●   介護者ごとの各評価値の記録件数・割合(「介護者×評価値」)
  • ●   介護者ごとの各場所の記録件数・割合(「介護者×場所」)
  • ●   介護者ごとの各利用者に対する記録件数・割合(「介護者×利用者」)
  • ●   利用者ごとの各項目の記録件数・割合(「利用者×項目」)
  • ●   利用者ごとの各評価値の記録件数・割合(「利用者×評価値」)
  • ●   利用者ごとの各場所の記録件数・割合(「利用者×場所」)
  • ●   利用者ごとのマイナス評価の付いた項目の内訳(「利用者×マイナス評価×項目」)
  • ●   利用者ごとのプラス評価の付いた項目の内訳(「利用者×プラス評価×項目」)
  • ●   各利用者の日ごとの項目別記録件数,評価値別記録件数(「介護者×日変動」)
  • ●   利用者ごとの時間帯(1時間区切り)の項目別記録件数,評価値別記録件数(「利用者×24h」)

これら具体的な数値データを比較することにより,個々の介護者がデータより得られた気づきをユニット内の介護者間で共有し,提供するケアの改善につなげることが見込まれる.

4.2 実証評価

実証期間を通じ,約852,000件の気づきデータを蓄積した.本稿ではそのうち実証期間がもっとも長かった施設のデータを分析対象とする.図4に当該施設のデータの蓄積状況を示す.

図4 分析対象の施設におけるデータの蓄積状況

また,分析に際し,気づき項目を,アクティブ気づきとパッシブ気づきの2種類に分類した(図5参照).アクティブ気づきとは,介護者自身の行動など,利用者への何らかの介入行為に伴い得られる気づきであり,その多くは介護者自身の行動を伴う.それに対し,パッシブ気づきは介護者が利用者を観察することによって得られる気づきである.

図5 アクティブ気づきとパッシブ気づき

分析結果として,本サービスモデルの有効性,ならびに介護サービスの外形評価とサービス向上に資する,以下の4点の知見を得た.

1点目は,個々の介護者の行動変容である.行動に伴うインタラクションによって得られるアクティブ気づきは利用者の事前期待(サービスの必要性),観察によって得られるパッシブ気づきはサービス提供後のフィードバック(利用者からの評価)という,利用者との価値共創に求められる異なる種類の潜在的な価値を得るプロセスと捉えられる.この2つの種類の気づきには相関性が存在し,価値共創が高まるに伴いその相関性も高まることが期待される.

図6図7は,個々の介護者がパッシブ気づきを入力した利用者数とアクティブ気づきを入力した利用者数の相関を示したものである.ここで熟練者とは,フィールドである介護施設側が,過去の実績に基づき予め対象者を抽出したものである.パッシブ気づきとアクティブ気づきの相関係数は,2013年度においては,全体が0.68であったのに対し,熟練者は0.82と,高い相関性を示す結果が得られた.

2014年度には,図8図9に示すように,全体の相関係数が0.90,熟練者が0.96と,2013年度と比較して相関性が高まる結果が得られた.1年間の取り組みの中で,介護者自身が自身の気づきを振り返ると共に,ユニット会等の場で介護者ごとの違いなどを比較することにより,行動変容が生じてきたことが推測される.

図6 パッシブ気づきとアクティブ気づきの相関(全体,2013年度)
図7 パッシブ気づきとアクティブ気づきの相関(熟練者,2013年度)
図8 パッシブ気づきとアクティブ気づきの相関(全体,2014年度)
図9 パッシブ気づきとアクティブ気づきの相関(熟練者,2014年度)

2点目は,このような個々人の能力増大による介護現場の効率性の向上である.これを示すのが図10である.横軸は,個々の介護者が1日の勤務でアクティブ気づきを入力した利用者数を示している.縦軸は,1日の勤務における利用者1人あたりのアクティブ気づきの記録件数である.

現行の介護保険制度においては,サービスの充実度を,介護者と利用者の人数比較で示すことが一般的である(例えば,3対1は,利用者3名に介護者1名の割合を示す).介護者1人が複数の利用者に対応する場合,利用者が増えるに伴いサービスレベルが低下するという考え方がこの人数比較で示す根拠であるわけだが,図10より,2013年度において,勤務日あたりの気づきの入力が利用者2~3名のときは1人あたり2.5件程度である一方で,利用者9名のときは1人あたり平均5件弱となっている.介護者1人あたりの対応人数,気づき入力数双方が増加していることから,個々の介護者の生産性向上が図られたことが推測される結果が得られた.

図10 介護現場の効率性

3点目は,「気づき」数の増加(状態をより的確に把握する能力の増大)とそれに伴う習熟度の外形評価である.図11は,本研究開始後に介護現場に就職し,最初から本モデルを用いて介護サービスに携わる介護者Aの気づき量の変化を月ごとにまとめたものである.

図11 介護者Aの気づきの記録件数の推移(月別)

短期間で急激に記録件数が増大したことから,状態把握能力が上昇したことが推察される.また,単純な右肩上がりではなく,一定期間ごとに入力件数の減少が見られる.これは,気づきの「共有」プロセスで,一定期間ごとに業務の振り返りを実施することにより入力件数が一時的に少なくなるという,多くの介護者に見られる傾向であるが,全体としては右肩上がりになる.なお,この介護者Aは,就職後2年目(介護職に初めて就いて2年目,2014年度)において,介護業務の的確性等が高く評価され,サブリーダーに就くこととなった.これは,当該法人においても群を抜く早さである.図12は,後述する習熟曲線の導出手法を用いて同じ介護者の気づき能力の変化を示したものである.各データポイントは当該介護者(介護者A)の月別の気づきデータを示し,曲線がこれら月別データに基づき算出した習熟曲線である.多少の前後はあるものの,この介護者の気づき能力が,グラフ左下に位置する2013年6月のデータから徐々にグラフ右上へとシフトしていく状況が示された.

図12 介護者Aの習熟曲線

ここで,本稿で示す習熟曲線について解説する.一般に習熟曲線とは,「経験曲線効果」と呼ばれる経験量と効率性の関係を示す経験則を前提として導出される曲線であり,多くの場合,横軸に経験量,縦軸に効率性を示す指標が用いられる.しかし,本稿では,一般的な習熟曲線が目的変数とするような効率性の一軸のみを指標とするものではなく,習熟を示す指標として,気づきの深さ(介護の質),気づきの広さ(業務効率性)という2つの新しい指標を導入し,効率性に替えて,その経験曲線効果を評価している.そのために,

  • ①「深さ」「広さ」それぞれを独立の変数として,経験曲線効果の定義に従い,経験年数(≒経験量と仮定)との関係を,シグモイド関数によって個別に回帰計算した.
  • ②次に①で得られた2つの回帰式(「深さ」と「経験年数」,「広さ」と「経験年数」の別個の回帰式)を用いて,連続した経験年数を変数として入力し,「深さ」と「広さ」の組み合わせを算出した.
  • ③気づきの「深さ」を縦軸に,気づきの「広さ」を横軸としたグラフに,②で推定した「深さ」と「広さ」の組み合わせをプロットし,そのプロットを近似曲線によって表現した.

この曲線が本研究における「習熟曲線」である.この習熟曲線は,上述の手順で算出した経験年数(≒経験量)と広さと深さそれぞれの回帰計算を基に推定された近似曲線であり,グラフ中のデータポイント(実数)の単純な近似曲線ではない.

4点目は,前述の習熟曲線を用いて可視化された,各介護者の気づきの差異である.気づきの深さについては,食事と排泄に関するベストプラクティスにおいて,利用者の状態変化に関係すると推定された特定のアクティブ気づき項目を抽出した上で,そのアクティブ気づきと偏相関が高いパッシブ気づきの項目を,「介護の質に関わるパッシブ気づきの項目」としたうえで,「気づきの深さ=介護の質に関わるパッシブ気づきの項目の勤務日あたり平均入力件数」と定義した.一方,気づきの広さについては,パッシブ気づきに基づいて利用者への介入・介助を行うとの前提に基づき,「気づきの広さ=パッシブ気づきの勤務日あたり平均入力利用者数」と定義した.図13図14は,習熟曲線を用いて各介護者の差異を可視化したものである.各データポイントに付したアルファベットは個々の介護者を示す記号であり,カッコ内は経験年数である.左下から右上に習熟曲線に沿って上昇するほど,より多くの利用者に対してより深い気づきが得られることを示す.図13におけるBや図14のJがリーダーもしくはリーダー経験者として非常に高い評価に位置している一方で,図14のDやKのように経験年数を重ねてもリーダーに就任していない介護者が左下に位置している.

図13 習熟曲線による介護者間の差異の可視化の例(2013年度,ユニットE)
図14 習熟曲線による介護者間の差異の可視化の例(2014年度,ユニットE)

これら4点より,以下の知見が得られた.まず,介護の現場で収集した気づきデータに基づいて導出した気づきの深さ・広さという指標を用い,個々の介護者の差異を可視化すると共に,個々の介護者のサービス向上に資する手法として適用可能であることが推測される結果が得られた.現場の介護者に気づきデータを可視化・フィードバックすることにより,個々の介護者の気づきの意識化やユニット内での介護者間の気づきの共有が促進され,介護者の行動変容を促すと考えられる.介護者の早期熟練化と個々の介護者の生産性(気づき件数と対応人数の変化)増加効果は,冒頭で述べた今後の介護サービスの質的低下が懸念される状況への有効な対応方策となると期待される.

次に,サービス科学の観点として,冒頭に述べたように,送り手側の主観的な状態把握能力がサービスの質の決定に支配的である分野において,潜在的な「気づき」を対象とした新たなサービスモデルを提案し,介護分野における実証を通じてその有効性を示した.

5. 結語

本稿では,価値共創モデルにおいて,事前期待が潜在的である属性を持つ分野における新たなサービスモデルとして,「気づき」に着目したモデルを提唱し,介護分野での実証を通じてその有効性を検証した.検証に用いたデータや手法は全体のごく一部に過ぎず,引き続きこれらデータを用いた検証を進めていくと共に,実用化を見据えた展開を進めていく.今後の更なる超高齢社会の進展において懸念される介護サービスの質的低下への新たな方策として,我が国,そして世界中の福祉分野の持続的な展開を支えていきたい.

  • 謝辞:本研究は(国研)科学技術振興機構 戦略的創造研究推進事業(社会技術研究開発)による研究成果の一部である.

著者紹介

  • 神成 淳司

慶應義塾大学環境情報学部准教授,医学部准教授(兼担).1996年慶應義塾大学政策・メディア研究科修了.2004年岐阜大学工学研究科修了.博士(工学).1996年IAMAS着任.岐阜県情報技術顧問等を経て,2007年慶應義塾大学着任.現在に至る.内閣官房 情報通信技術(IT)総合戦略室長代理/副政府CIOを併任.政府のIT政策の立案・推進を担う.専門は,情報政策,社会システム・制度の設計・評価.

  • 福田 亮子

(株)ベネッセスタイルケア ベネッセ シニア・介護研究所主任研究員.1999年慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科後期博士課程修了.博士(学術).ミュンヘン工科大学人間工学研究室研究員(Dr.rer.nat.(理学博士)取得),慶應義塾大学環境情報学部専任講師,同大学院政策・メディア研究科特任准教授,(福)こうほうえん研究員等を経て,2015年より現職.介護における熟達化,ジェロンテクノロジー,視覚情報処理を中心とする人間工学分野の研究等に従事.

  • 村井 純

1979年慶應義塾大学工学部数理工学科卒.1981年慶應義塾大学大学院工学研究科修士課程修了.1987年同大学院博士(工学).1984年東京工業大学助手.1987年東京大学助手.1990年慶應義塾大学環境情報学部助教授を経て1997年より同大教授.1999年より2005年まで慶應義塾大学SFC研究所所長.2003年よりAuto-IDラボジャパン所長.2005年より2009年まで慶應義塾常任理事兼慶應義塾大学環境情報学部教授.

参考文献
 
© 2019 Society for Serviceology
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