サービソロジー
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会員活動報告
サービス品質の標準化を検討 ~サービス品質検討委員会
戸谷 圭子
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2016 年 3 巻 3 号 p. 36-37

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1. サービス品質検討委員会の設置

サービス品質検討委員会は,サービス標準の設置を検討することを目的に,2016年4月のサービス学会理事会承認によって設置された委員会である.日本品質学会・日本規格協会とサービス学会が共同で,ミラー委員会の形をとり,サービス標準を実際に策定していくための活動の準備委員会(通称サービスQ計画研究会)を設置することとした.これは,次段階で本格的なサービス標準化委員会,すなわち,日本のサービス規格,また将来的には国際規格としてISOへの提案を視野に入れた委員会設置の準備を行うものと位置付けている.本委員会は,上記の活動と同時に,日本品質管理学会との連携を深め,サービス研究に関する人的交流と情報交換を目的するワークショップなどを実施する.

サービス学会側の本委員会メンバーは,委員長を芝浦工業大学 新井 教授(前会長),幹事を筆者(明治大学 戸谷)が務め,委員は,関西学院大学 山本 教授(会長),産業総合技術研究所 持丸氏,山本氏の5名である.

2. 設立経緯

本委員会設立のきっかけは,2016年2月のイギリスの規格協会BSI との意見交換会である.イギリスの規格協会BSIの規格部門最高責任者Scott Steedman氏の来日に合わせ,上記の3機関から数名のメンバーが出席して行った.意見交換会では,主に両国に存在するサービス規格の内容,現在の動きを紹介した.その際,イギリスのサービス規格設置の動きが本格化している事実が判明した.そこで,日本規格協会から日本のサービス標準設置(将来的にはISO提案を想定)を早急に進めたいという提案があり,サービス学会,日本品質管理学会と協力して3者ミラー委員会を設定,サービス標準設置に関するワーキングを行うこととなった.上記3機関は,前年の2015年12月から既にサービス品質に関する議論を非公式に行っていたが,この意見交換会を契機に,3者の活動を正式にスタートすることとなった.なお,3者の合同委員会は,サービスQ計画研究会と呼ばれている.

3. 現在までのサービス品質検討委員会活動

サービス品質検討委員会は毎月最低1回の会合を持ち,主に以下を中心に活動している.

  • 1.   サービス規格内容の議論
  • 2.   ミラー委員会設置準備と実務界との協力関係の確立

以下に,活動の記録と具体的な議論の内容の一部を抜粋して示す.

  • 【これまでの活動】
  • 第1回 4月7日

    サービスQ計画研究会発足,メンバー紹介など

  • 第2回 5月6日

    各組織からのサービスにかかる研究の歴史を共有

  • 第3回 7月15日

    サービス標準化委員会設置に向けた方針検討

  • 第4回 8月8日

    経済界からの質問・要請への対応と,サービス標準フォーラムの企画検討

  • ✳   この間に,委員会以外に経済界との協力関係構築のため,二度の経団連訪問などの活動を実施
  • ●   7月27日 経団連への協力依頼
  • ●   8月3日 経団連担当理事への説明と意見交換

3.1 サービス標準の手順と役割

サービス標準化の手順として,以下の3段階,7つのステップで進めていくことで合意を得た.

  • 科学化段階

  • ①    科学的なサービスの類型化(業種分類とは異なる軸での類型化)
  • ②    一般化された概念モデルの作成
  • ③    評価方法論の開発

  • 標準化段階

  • ④    標準化の優先順位決定
  • ⑤    類型モデル標準開発
  • ⑥    アプリケーションなど実現標準の開発

  • 実用化段階

  • ⑦    社会実装

サービスQ計画研究会は①②③の科学化段階までを実施し,標準化段階でサービス標準化委員会を発足するという形になる.

これまでの委員会では,各分野のサービス研究動向を共有してきた.サービス・マーケティングの分野では,1990年代にはサービスの特性とその品質に関する議論が盛んであった.この時のサービスは,無形財を指し,モノの財との特性の違い,その評価のための尺度や評価方法が重要課題であった.その後,時代の流れとともにS—D Logicが登場し,サービスの範囲が拡大し,共創・サービスエコシステムなどの新たな研究課題が生まれている.

品質管理の分野では,同じく1980年代にサービス業におけるTQCなどを通して無形財の品質管理研究は盛んになり,品質誌への論文投稿も多数行われ,狩野モデルの適用や,サービス産業でのデミング賞受賞などで全盛期を迎えたものの,その後TQCそのものが下火になっている.それらの経験を経て,サービスは認識科学ではなく,設計科学であり,個々のケースでの成功だけでなく理論化が必要であること,人文社会系との連携で学としての再生が必要であるといった指摘がなされた.

日本規格協会によれば,日本でサービス産業関連の規格開発が遅れているのはJIS(工業標準化法)がサービス産業を規格対象としていないことが影響している.一方,海外の状況は,サービスの国際規格に対するニーズが高まり,ISO理事会技術管理委員会がサービス規格開発を2016年の優先課題として位置付けていることが報告された.それを受けてサービス規格に関するテクニカルグループが増加している.

3.2 ミラー委員会設置準備と実務界との協力

サービス標準は実務で活用されるべきものであり,現在のサービス品質検討委員会が,次段階のサービス標準化委員会となる際には,学術界のみでなく,実務界から賛同,参画を多数募る必要がある.そのため,広く活動を理解してもらうためのフォーラムを企画し経団連の協力を得ることとなった.

  • 《フォーラム内容》

  • テーマ:   サービス標準化フォーラム
  • 日時:   2016年10月14日午後
  • 場所:   経団連会館(東京 大手町)
  • 企画概要:   物流・ヘルスケア・小売業界からの講演,およびパネルディスカッションを行う.

表1 サービス品質検討委員会(サービスQ計画検討会)メンバー表
氏名 所属・役職
サービス学会
新井 民生 芝浦工業大学 教授
山本 昭二 明治大学 教授
戸谷 圭子 関西学院大学 教授
持丸 正明 産業技術総合研究所 センター長
山本 吉伸 産業技術総合研究所
品質管理学会
椿 広計 統計センター 理事長
山田 秀 慶應義塾大学 教授
水流 聡子 東京大学 特任教授
日本規格協会
加藤 芳幸 日本規格協会 参与
若井 博雄 日本規格協会 参与
斉藤 大介 日本規格協会サービス標準化課長

著者紹介

  • 戸谷 圭子

明治大学大学院グローバル・ビジネス研究科 教授.株式会社マーケティング・エクセレンス マネージング・ディレクター.学術会議連携会員.MBAでサービス・マーケティングの教鞭をとる傍ら,実務で金融マーケティングのコンサルティング・ファームを経営.

 
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