サービソロジー
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会議報告
ICServ 2018
米田 晶
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2019 年 6 巻 1 号 p. 38-39

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1. はじめに

2013年より開催されてきたサービス学会の国際会議であるが,第6回となるICServ2018は,台湾服務科学学会(Service Science Society of Taiwan ; S3TW)が展開するプロジェクトの一つであるICSSI(International Conference on Service Science and Innovation)とサービス学会との合同開催(Joint International Conference of Service Science and Innovation and Serviceology - ICSSI 2018 & ICServ 2018 -)の形式で,台湾中部に位置する台中市で開催された.

会場は,1日目が亜州大学(台中市),2日目が工業技術研究院(南投県),3日目が長榮桂冠酒店(台中市)であった.台中市は,人口およそ280.1万人を擁する台湾第2の都市である.台北市から約160キロ,台湾高鐵(新幹線)で約1時間の距離にある.

図1 亜州大学での集合写真(学会提供写真)
図2 工業技術研究院(学会提供写真)

2. 学会の概要

ICSSI 2018 & ICServ 2018は,2018年11月13日から15日の3日間の日程で開催された.3日間を通して,6名の全体講演(Keynote speech),77組の発表および10組によるポスターセッションが行われた.学会参加者は164名で,台湾,中国,日本,韓国,マレーシアなどアジアからの参加者が大多数であった.論文は,次の属性の少なくともいずれかの属性が適合するものが公募された.

  • ●   Science - service management, service X-logy (ontology, epistemology, methodology) etc.
  • ●   Engineering - service engineering, smart systems, IoT, VR/AR, autonomy, etc.
  • ●   Reinventing - service innovation, service design, service tools, intellectual property, etc.
  • ●   Value - service value, knowledge, performance, business, industry, government, environment, etc.
  • ●   Integration - service mindset, theories, procedures, technologies, industries, etc.
  • ●   Co-creation - with users, employees, clients, governments, international providers, etc.
  • ●   Economy - experience economy, sharing economy, circular economy, creative economy, etc.
  • ●   +(plus) - emerging concepts (ex: artificial humanity) or things that are relevant to service

その結果,3日間で17のセッションとポスターセッションおよび全体講演から学会プログラムが構成された.

研究発表は,サービス工学,情報工学,医学,経営学,サービス・マーケティング,サービス・マネジメント,消費者行動論などの視点から,教育,観光(宿泊業,飲食業など),医療,製造業,小売業などの課題にアプローチするものが多く,東アジア全体の社会問題となっている「高齢化」に関する研究発表も多数見られた.

ICSSIとICServの合同開催は今回が初めてで,台湾・中国からの学会参加者のなかには,ビザ等の関係もあり,海外で開催される学会への参加が難しく,国際学会に初めて参加するといった若手研究者も多かった.著者が学会で交流した参加者からの声として,「台湾で開催される今回の学会は得難い機会」(台湾・大学教員),「テーマが多岐にわたっており,どのテーマも興味深かった」(台湾・大学教員),「新しいアイデア(トピック,テーマ)が得られた」(台湾・学生ほか),「(自分の研究と)同じ研究対象の発表があり,参考になった」(韓国・大学院生),「大勢の研究者と知り合えた」(台湾・学生),「日本のサービス研究の現状を知るいい機会となった」(台湾・大学教員),「日本と台湾の研究者間の交流が少なかった」(台湾・大学教員ほか)などがあった.

また,ランチタイムの後,博物館や建物の紹介など簡単なエクスカーションも日程に組み込まれていた.特に,2日目の会場となった技術研究院は「ほとんどの参加者が訪問する機会がない場所」(学会ホームページ)でもあり,日本人と台湾人のパートナーシップで活動しているnoiz建築設計事務所がファサード等のエクステリアデザインを手がけたデザイン性の高い建物でもあることから,建物の説明を含み,ランドスケープが体感できる見学ツアーが実施された.

学会最終日には閉会式が行われ,ベストポスターおよびベストペーパーが表彰された.各分類における受賞者は,次の通りである.

  • ・ベストポスター
  • タイトル:Learning Patient Transfer Skill by Using a Robot Patient
  • 著者:Chingszu Lin, Masako Kanai-Pak, Jukai Maeda, Yasuko Kitajima, Mitsuhiro Nakamura, Taiki Ogata, Jun Ota

  • ・ベストペーパー
  • タイトル:Zone of Tolerance for Perceived Service Quality and Its Extension to SERVQUAL Model
  • 著者:Toshikuni Sato

  • ・ベストペーパー
  • タイトル:Enabling Value Co-Creation in Customer Journeys with VIVA
  • 著者:Iván S. Razo-Zapata, Eng K. Chew, Qin Ma, Loïc Gammaitoni, Henderik A. Proper

3. 全体講演

学会期間中を通して行われた全体講演(Keynote speech)は6件で,タイトルおよび講演者は次表の通りである.

表1 全体講演のタイトル・講演者
タイトル 講演者
A Co-Creation for Success Mr. Hiroshi Nishikawa
B The Artistry of Design: The Muse and the Therapist Ms. Maggie Peng
C Useful Uselessness: The Origin of a Creative Industry Dr. Hsueh, Wen-Jean
D Well-being of Manufacturers through IoT Service Ms. Miwako Sato
E ISO Standardization Activities on Services: Service Excellence, Healthcare services, Sharing economy Dr. Masaaki Mochimaru
F The Future of Software: Platform, Solutions & Services Dr. Kris Singh

全体講演の内容は,実務の場における価値共創の成功事例や成功要因に関する講演と,これからのサービス研究と関連のある講演とが行われた.なかでも,サービスに関するISO基準の開発については,最新の開発状況が報告され,興味深かった.観光が主な研究領域である著者にとっては,今後の日本のインバウンドツーリズムとも関連のある評価基準であること,取得することがランドオペレーターとしての旅行会社の国際的な競争力に影響をおよぼす認証基準ともなり得ることから,今後の観光事業および観光研究に重要な情報が得られた講演であった.

4. 次回のICServ

次回は,2020年3月12日~16日に大阪成蹊大学にてHospitality servicesをテーマとして開催される.

〔米田 晶(関西学院大学大学院博士課程)〕

参考文献
 
© 2019 Society for Serviceology
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