鉱山地質
Print ISSN : 0026-5209
磁鉄鉱系花崗岩類とチタン鉄鉱系花崗岩類
石原 舜三
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1977 年 27 巻 145 号 p. 293-305

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抄録

表題の2組の花崗岩類について,主として鏡下観察結果から構成鉱物の特徴が記載され,分類の基準・両者の分布・成因・鉱化作用との関連性などがのべられた.2組の花崗岩類は一般の鏡下観察(100×)で磁鉄鉱が認められるか否かの点で分類され,磁鉄鉱系花崗岩類は0.1―2容量%の磁鉄鉱とごく少量のチタン鉄鉱を有し,チタン鉄鉱系花崗岩類は0.1容量%以下のチタン鉄鉱を伴うにすぎない.すなわち,両者は苦鉄質珪酸塩鉱物とFe-Ti酸化鉱物の量比において著しく異なり,チタン鉄鉱系花崗岩類はFe-Ti酸化鉱物に欠ける系列とみなしてよい.
このFe-Ti酸化鉱物に欠ける事実から,チタン鉄鉱系花崗岩類が磁鉄鉱系花崗岩類より低い酸素フュガシテイの条件下で生成されたものと推論された.このように考えると,2組の花崗岩類にそれぞれ特徴的に認められる他の苦鉄鉱物や硫化鉱物の組合せが説明し易い.両者の酸素フュガシティを定量的に推定する共通の鉱物組合せは得られていないが,黒雲母のFe+3/Fe+3+Fe+2比から両者の境界はほぼNi-NiOバッファー付近と考えられた.花崗岩類の生成時の酸素フュガシティを規制する要因としては花崗岩質マグマの発生から固結に至る過程における炭質物によるバッファーが重視され,H2Oの解離とH2の逸散は磁鉄鉱系花崗岩類の一部について考慮された.磁鉄鉱系花崗岩類は炭質物が存在しない深所起源であり,チタン鉄鉱系花崗岩類は炭質物を伴う大陸地殻起源であろうと考えられた.
花崗岩類中かその近傍に産出する鉱床においては花崗岩類にみられる性質が継続して認められ,たとえばポーフィリーカッパー鉱床では磁鉄鉱系花崗岩類と共通の鉱物組合せが産出する.2組の花崗岩類の性質はマグマ期末期から後マグマ期の一部に及んでおり,花崗岩類に密接な鉱床探査では両者を識別することが重要である.スズ-鉄マンガン重石鉱床がチタン鉄鉱系花崗岩類と密接な経験則から,環太平洋地域の西側では磁鉄鉱系花崗岩類に乏しいことが予想され,このことが沿海州―中国大陸南東部―マレ―半島に至る中生代花崗岩類にポーフィリーカッパー鉱床が発見されない一因と考えられた.

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