鉱山地質
Print ISSN : 0026-5209
秋田県小坂鉱山における黒鉱下部珪鉱体の流体包有物の研究
丸谷 雅治武内 寿久禰
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1978 年 28 巻 151 号 p. 349-360

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抄録

秋田県小坂鉱山の上向第4鉱体および内の岱西鉱床第7下部珪鉱体の珪鉱中の流体包有物について充填温度および塩濃度の測定を行ない,黒鉱鉱床を生成した鉱化流体の物理化学的条件について検討を加えた.石英の充填温度の範囲は上向第4鉱体の層状珪鉱体は260-310℃,下部珪鉱体は280-320℃であり,層状黒鉱型珪鉱では260~290℃,層状黄鉱型珪鉱では280-310℃であった.層状珪鉱体中の閃亜鉛鉱は200-240℃,下部珪鉱体中の閃亜鉛鉱は235-280℃で,いずれも共生する石英より低い温度を示した.上向,内の岱西のいずれの下部珪鉱体でも各レベルにおける温度はあまり変化がなく,約300℃前後に集中し,温度条件はかなり一様であったものと推定されるが,試錐岩芯のデータは下部で温度が上昇する傾向があることを示している.塩濃度は2.5~5.5wt.%であり,下部において増加している.これらの流体包有物のデータから黒鉱鉱床の生成時の海の深さは1,000m以上であったものと推定される.

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