下川輝緑岩は,下川鉱床の母岩であり,主に枕状溶岩と輝緑岩岩床,およびこれらの間に介在する粘板岩などからなる.鉱床周辺では,輝緑岩はいちじるしい角閃石化を受けているが,単なる鉱化帯の廻りでは,角閃石化が弱い.また,鉱床に向って角閃石の量が増大すると共に,アクチノ閃石からアクチノ閃石質角閃石へと変化する.角閃石化におくれて,角閃石化帯の中心付近で,緑泥石化と珪化が行なわれ,緑色片岩質岩が形成された.この岩石は,つねに鉱床の直接の母岩であり,縞状鉱や鉱染鉱をつくっている。その緑泥石は,Feに富むという性質をもつ.層位学的層準とは無関係で,輝緑岩類や粘板岩などの交代作用によって形成されたものである.これらの事実は,鉱床の後成起源を暗示する.