1980 年 30 巻 160 号 p. 101-102
フリエダ鉱床は,いわゆるニューギニア・モービルベルト地帯にあり,中期中新世の安山岩質火成岩コンプレックスに伴われる.フリエダ周辺にある同一マグマ起源と思われる種々の貫入岩はK-Ar法によって13.5~16.6×106年前に貫入したものとされている.
このコンプレックスは安山岩質砕屑岩と熔岩からなる噴出岩と安山岩斑岩~石英閃緑岩の貫入岩によって構成されている.これらの噴出岩と早期貫入岩の分布方向と広範囲に認められている"Acid変質"(石英,カオリナイト,明ばん石,絹雲母~パイロフィライト,黄鉄鉱,硫黄)およびポーフィリーカッパー変質の分布方向はいずれもNW系であり,これらの火成活動と変質活動がSE-NW方向の応力により規制されたことを示している.後期に貫入した非変成閃緑岩は火山構造性陥没地帯に沿って貫入したものと考えられる.最末期に貫入したNE方向の岩脈と噴出岩中にNW方向の褶曲があることは火成活動の末期に応力の方向がSE-NWからSW-NE方向に変化したことを示している.
フリエダにはポーフィリー型鉱床とは異なるAs-Cu-Ba-Au鉱床も認められている.これは塊状黄鉄鉱と硫砒銅鉱―ルソン銅鉱―重晶石脈からなる."Acid変質"の構成鉱物である石英,明ばん石,黄鉄鉱,硫黄等はこのAs-Cu-Ba-Au鉱化に調和して分帯配列しているように思われる.
As-Cu-Ba-Au鉱床の探鉱は十分に行なわれていないので鉱量計算をする段階までには達していないが,ポーフィリー型鉱床の探鉱はかなり進んでおり,Ivaal鉱床,Horse鉱床,Koki鉱床の概略はほぼ明らかにされている.これらの3鉱床では,計7億6千万トン,0.47% Cu,0.28g/t Au,約40g/t Moの鉱量が確認されている.
ポーフィリー型鉱床の主要鉱物は黄鉄鉱と黄銅鉱で,斑銅鉱,輝銅鉱,輝水鉛鉱,磁鉄鉱を伴う.これらは変質鉱物である黒雲母,正長石,石英,絹雲母~パイロフィライト,緑泥石,緑簾石,曹長石,紅柱石,硬石膏と共に割れ目充填,脈,鉱染状に産出する.変質鉱物累帯は母岩の化学的性質によって,それぞれのポーフィリー型鉱床間で若干異なっている.Ivaal鉱床では中心部から外縁部に向って,黒雲母の多いPotassic帯,石英脈の多いTransitional帯,Sericite-Quartz-Chlorite帯,Sericite-Quartz-Andalusite帯,Propylitic帯へと漸移している,しかしHorse鉱床とKoki鉱床ではSericite Quartz-Andalusite帯を欠き,さらにKoki鉱床はTransitional帯とSericite-Quartz-Chlorite帯もあまりはっきりしない.これらのポーフィリー型鉱床や他の2~3ケ所で探鉱中のポーフィリー型鉱化の中心部には常にHorse microdioriteが存在しており,Horse microdioriteは当地域のポーフィリー型鉱化の運鉱岩であると考えられる.
Ivaal鉱床とHorse鉱床の一部には溶脱帯と共に二次富化帯があり,ブランケット状に約4千万トン,0.85~0.90%Cu,0.3g/t Auの鉱量がある.この二次富化帯では輝銅鉱と少量の斑銅鉱,銅藍が黄鉄鉱,黄銅鉱を交代しており,初生Cu品位の1.7倍のCu品位を示す.フリエダのポーフィリー型鉱床には中心のPotassic帯から外縁のPropylitic帯にかけて大量の硬石膏がもたらされているが,上部は天水により溶脱されている.この硬石膏溶脱帯は二次富化ブランケットの下面からさらに150~200m下位まで達しており,天水の影響はCu溶脱帯と二次富化ブランケットの形成だけでなく,さらに下部までおよび,硬石膏溶脱帯の形成にも関与している.
フリエダで認められている2つのタイプの鉱床――ポーフィリー型鉱床と"Acid変質"に伴うAs-Cu-Ba-Au鉱床――は同一シリーズの火成活動による一連の熱水作用によってもたらされたものであろう.前者は比較的地表下深部で起きたポーフィリーカッパー鉱化作用によってもたらされ,後者は地表近くで起きた噴気性鉱化作用によってもたらされたものと考えられるが,フリエダはこれら2つの鉱化作用の成因関係を明らかにするための恰好のフィールドを提供しているように思われる.