鉱山地質
Print ISSN : 0026-5209
主要鉱石鉱物中の銀の含有有量について
西山 孝日下部 吉彦
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1986 年 36 巻 200 号 p. 425-437

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抄録

銀の世界生産量の多くは鉛,亜鉛あるいは銅鉱床からの副産物として生産され,銀鉱床からの産額よりも多い.副産物としての銀は銀鉱物の形でも産出するが,鉛鉱物,亜鉛鉱物,銅鉱物などに微量元素として含まれるものが主体をなしている.そこで,主要鉱石鉱物の黄鉄鉱(139個),黄銅鉱(43個),閃亜鉛鉱(88個),方鉛鉱(59個),硫砒鉄鉱(6個),磁硫鉄鉱(32個),斑銅鉱(3個),四面銅鉱(4個)およびマンガン鉱物の菱マンガン鉱(90個),バラ輝石(27個),パイロクスマンジャイト(20個),テフロ石(6個),マンガンざくろ石(3個),ブラウン鉱(10個),ハウスマン鉱(6個)について原子吸光分光分析法ならびにEPMA法により銀を分析し,各鉱石鉱物中の銀の分布状況を検討した.その結果,次のようなことが明らかになった.
(i)鉱床によって銀を多く含む鉱物は異なっており,分析した8種の硫化鉱物に限ると,釈迦内鉱床,Sangkaropi鉱床では四面銅鉱に,Broken Hill鉱床,神岡鉱床,豊羽鉱床では方鉛鉱に,Mount Lyell鉱床では斑銅鉱に,Mamut鉱床,大江鉱床では黄銅鉱に多くの銀が含まれている.
(ii)一般に,四面銅鉱≫方鉛鉱≫黄銅鉱>閃亜鉛鉱,黄鉄鉱>磁硫鉄鉱,硫砒鉄鉱の順に含銀量は少なくなる.しかし鉱床による含銀量の変動は大きく,一義的に決めることはできない.とくに上記の四面銅鉱および方鉛鉱を除く,黄銅鉱以下の鉱物では鉱床により含銀量比はさまざまなパターンをとる.
(iii)マンガン鉱物中の銀の量は極めて少なく,第三紀の鉱脈型鉱床からの菱マンガン鉱の一部に銀が検出される程度である.層状マンガン鉱床からのマンガン鉱物には銀はほとんど含まれていない.

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