抄録
北海道常呂帯の中生代層には酸化マンガン鉱床と含マンガン鉄鉱床が分布している.含マンガン鉄鉱床は放散虫チャートの薄層を上盤とし,枕状溶岩を下盤とする層状鉱床であり,酸化マンガン鉱床は放散虫チャート中に存在する層状鉱床である.これらの鉱床はチャートのような珪堆積岩を伴っていることから海底における火山-堆積性鉱床と考えられる.
含マンガン鉄鉱石と酸化マンガン鉱石のFe/Mn比の平均値は6.41と0.017であり,酸化マンガン鉱石は現在の深海底熱水鉱床のような低いFe/Mn比で特徴づけられる.酸化マンガン鉱石中の微量成分(Co, Ni, Cu, and Zn)の含有量は水成起源のような高いものと熱水起源のような低いものに分類される.
これらの地質関係と化学分析の結果,常呂帯のマンガン鉱床は白亜紀初期頃,部分的に水成起源の影響を受けてはいるが,主に海底熱水活動によって金属元素の濃集.が行われて形成されたと考えられる.