鉱山地質
Print ISSN : 0026-5209
イベリア黄鉄鉱鉱床帯の褶曲構造
鈴木 茂之於保 幸正光野 千春BECK Jochen S.
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1990 年 40 巻 222 号 p. 245-255

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抄録

イベリア半島南部のイベリア黄鉄鉱鉱床帯は上部デボン系と下部石炭系からなり,酸性火砕岩類と堆積性の層状黄鉄鉱鉱床を伴うことが特徴である.これらの地層および鉱床は2回以上の褶曲作用を受けていることが知られていたが,各鉱山および各地域の褶曲構造の形態や特徴を記載し,さらにその褶曲時相を示した例は少ない.ここでは劈開面などの構造要素を利用して褶曲構造を解析した結果,3回の褶曲作用を識別し,タルシス鉱山地域,ソチエル鉱山地域,アスナコリャール鉱山,ポマラオ地域,コルテ・ド・ピント地域の褶曲構造の記載を行った.解析においては,特にスレート劈開面と層理面との斜交関係やドラッグ褶曲の形態による上位方向の判定を利用することによって,褶曲の軸部の位置や形態がより実証的に正確に決定できた.
褶曲構造は一次から三次の3つの時相のものに分けることができる.一次褶曲は等斜から一部に開いた形態をなし,軸面に平行なスレート劈開を伴うことが特徴である.続いて形成された二次褶曲は開いた形態をなし軸面に平行なちりめん劈開を伴うことが特徴である.三次褶曲はきわめて局地的なもので,二次褶曲によるちりめんじわ劈開を切るさらに新しいちりめんじわ劈開が認められたことにより,その存在が確認できる.調査地域のうち,タルシス鉱山地域のフィロン・ノルテとアスナルコリャール鉱山に分布する地層と鉱床,ポマラオ地域の地層は一次褶曲作用によって変形している.タルシス鉱山地域のブルカノ,ソチエル鉱山地域,コルテ・ド・ピント地域では,先に形成されている一次褶曲構造が二次褶曲作用によってさらに変形している.

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