資源地質
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フイリピンルソン島北部バギオ地域におる熱水活動の変遷と酸性変質・明礬石の地球化学
青木 正博コムスティーラゾー松久 幸敬
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1993 年 43 巻 239 号 p. 155-164

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抄録

フィリピンルソン島北部,バギオ地域の酸性変質帯は,浅熱水性金鉱化作用と関連する過去の熱水活動の性格を反映している.この酸性変質はパイロフィライト,ダイァスポア,ディッカイトのほかに明瞭な組成累帯をもつ明礬石固溶体の産出で特徴づけられ,地表部に大規模な溶脱・残留珪化岩をともなっている.明礬石は,その結晶核がBa, Sr, PO4に富むとともに,δ34S=15~24パーミルと比較的重い硫黄同位体組成をもつことから,H2SO4,HCIなどの反応性に富んだマグマ発散物を含む高温熱水によって生成されたものと考えられる.
尾根づたいに分布する塊状の残留珪化帯の下には,広範囲にわたるプロピライト変質がある.プロピライト化帯は,同一の割れ目規制を受けた含金石英脈と脈状酸性変質帯によって貫かれている.脈状の酸性変質は,石英,セリサイト,パイロフィライトを主要構成鉱物とし,部分的にダイアスポア,ディッカイト,明礬石を伴う.塊状の酸性変質は,付近に貫入しているマイクロダイオライトよりも1m.y.遅れて, 1.4-0.9Maに形成された.また,その後の熱水活動により0.6Ma前後に,バギオ地域の浅熱水性含金石英脈群ができた.後期の熱水系は,主として中性pH熱水の循環系であったが,ケリー鉱床付近ではマグマ起源の酸性流体によるオーバープリントが起こった.

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