資源地質
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日本における火山成塊状硫化物鉱床の母岩の地球化学とテクトニックセッティング
下川および日立鉱床の例
鞠子 正加藤 幸男
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1994 年 44 巻 247 号 p. 353-367

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抄録

下川および日立鉱床はそれぞれ白亜紀―古第三紀および後期古生代に形成された付加複合体中に産するCu-Zn型火山成塊状硫化物鉱床である.蛍光X線法による母岩の主成分・微量成分分析などによる地球化学的研究の結果,下川塩基性岩および塊状硫化物鉱床はカリフォルニア湾あるいはアンダマン海のようなpull-aprt海盆で形成されたと推定される.このpull-apart海盆はクラー太平洋海嶺と日本弧の衝突により生じた海嶺―海溝―海溝三重結合点の移動に伴い,古第三紀に北海道で形成されていたと考えられる.日立付加複合体は主として,カルクアルカリ岩系塩基性―酸性島弧火山岩,カルクアルカリおよびソレアイト岩系塩基性―酸性背弧火山岩およびボニナイトトからなり,初成的にはファラロンプレート上の背弧島弧―海溝系で後期古生代に形成された超沈み込み帯オフィオライト(supra-subduction zone ophiolite)と見ることができる.日立鉱床は,この島弧系背弧海盆の拡大軸における酸性および中性の火山活動に伴う熱水溶液により形成されたものと考えられる,鉱石の性質,テクトニックセッティング,および関係する火山岩から考えて,日立鉱床は黒鉱鉱床よりもノランダ型鉱床およびスカンジナビア―カレドニア型Cu-Zn鉱床に類似している.

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