資源地質
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岩手県釜石鉱山天狗森鉱床のスカルン型銅鉱石の炭素・酸素同位体組成
春名 誠大本 洋
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1996 年 46 巻 257 号 p. 125-136

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抄録
釜石鉱山天狗森銅鉱床は、白亜紀の花崗岩質岩体(蟹岳複合岩体)に近接するスカルン型銅鉱床である。天狗森鉱床における熱水活動は、スカルン化期(単斜輝石およびザクロ石)、主要硫化鉱物(黄銅鉱+磁硫鉄鉱)+石英鉱化期、および方解石鉱化期に区分される。単斜輝石・ザクロ石・石英・方解石は、各々+6.6―+7.8‰,+4.2―+7.0‰+12.0―+13.7‰,および+10.6―+12.8‰のδ18O(SMOW)値を示す。これらのδ18O値より、同位体平衡を仮定して計算された温度は、鉱物対によらず一定の値(およそ330-460℃)を示すが、圧力補正した流体包有物の均質化温度~180-330℃,および主要硫化鉱物である黄銅鉱+六方磁硫鉄鉱の安定上限温度325℃より約50-100℃高い。この相違は、熱水溶液のδ18O値が一定でなく、鉱化期と共に低下していることによると考えられる。スカルン化期における熱水溶液のδ18O値(+6.4―+9.4‰)は、マグマ水のδ18O値、あるいは母岩と平衡にある水のδ18O値と一致する。主要硫化鉱物(黄銅鉱+磁硫鉄鉱)+石英鉱化期における方解石鉱化期における熱水溶液のδ18O値(+2.0―+7.0‰)からは、低温まで蟹岳複合岩体と反応し続けたマグマ水、母岩と平衡にある水、あるいは天水の流入が示唆される。方解石は、-5.44から-0.37%。のδ13C(PDB)値を持ち、これから推定される熱水溶液のδ13C値は、炭素がマグマ、石灰岩の両方からもたらされたことを示唆する.方解石鉱化期における熱水溶液には,その高い塩濃度(最高23%に達する)およびδ13C値より、マグマ水が寄与していると思われる。
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