資源地質
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若松鉱山のかんらん岩およびクロム鉄鉱岩の岩石学的研究
三宅 一弘荒井 章司奥野 正幸
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1997 年 47 巻 4 号 p. 211-221

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抄録

多里―三坂超苦鉄質岩体中の若松鉱山のかんらん岩とクロミタイトを調べ,ポディフォーム型クロム鉱床の成因について考察した.若松鉱山の坑内および周辺の岩石は花崗岩により熱変成を受けているが,岩石の初生構造は岩石組織の遺骸により判別できる.ダナイトは鉱山周辺で多く見られ,クロミタイトはダナイト中にポッド状に出現する.これらのかんらん岩はクロマイト・ポッドからの距離により,クロミアン・スピネルの組成や化学組成が変化している.クロマイト鉱床から十分離れている三坂地域のハルツバージャイト中のスピネルは,Ti含有量が低く(<0.2wt%),複雑な他形の形態を呈している.ダナイトとの境界に近いハルツバージャイト中のスピネルは,他形のものが少なくなりややTiに富む(0.5wt%).ダナイト中のスピネルもTiに富み(0.5wt%),クロミタイトに向かってTi含有量は増加し,自形度の高いスピネルが多く見られる.一方,クロミタイトはそのスピネルのモード組成に関わらずむしろ均質な鉱物組成を持ち,0.7wt%に達するTi含有量(多くは0.2~0.4)を示す.すべての岩相において,Cr#(=Cr/Cr+Al:原子比)は0.4~0.6の狭い範囲に収まる.
このような特性は,ポディフォーム・クロミタイトとそれを取り巻く橄欖岩の成因を支配する,メルト/ハルツバージャイト相互反応の存在を示唆する.つまり,低いTi含有量を持つハルツバージャイトから,Tiに富むメルトの通過によって,Tiに富むダナイトークロミタイトおよびそれを取り巻くハルツバージャイトが形成されたと考えられる.

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