抄録
常温において,CO2 流速を制御しMg2+ イオン共存下で,ホタテ貝殻焼成物からアラゴナイトが合成できた。Mg2+ イオンは大部分が溶液中に残存し,あたかも一種の触媒のように振る舞うかにみえたが,ごく少量は微細なカルサイト結晶の表面に特異的に吸着し,カルサイトの結晶成長を妨害する働きをしていた。FE-SEM観察によって,アラゴナイトの形態およびサイズは反応温度に鋭敏に影響を受けることがわかった。原料を石灰石とした場合と比較すると,ホタテ貝殻から合成したアラゴナイトは凝集しやすい傾向がみられた。本研究によって,廃ホタテ貝殻のより高度な用途開発が可能となり,しかも微粒のアラゴナイト結晶の常温合成,いわゆるソフトプロセスが可能であることが明らかとなった。