日本鉱業会誌
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太平洋炭鉱における切羽出水に関する研究 (第1報)
出水状態の観測および対策について
佐藤 進
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1957 年 73 巻 827 号 p. 277-283

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抄録

以上出水状態の観測および若干の考察を述べてきたが, これを要約すると次のとおりとなる。
(1) 切羽出水をもたらす含水層は, 本層下約30mから50mに至る間の厚さ約20mの粗粒砂岩群と思われる。これと本層炭との間の約30mはcap rockとなつていると思われる。
(2) この湧水は化学的に特徴顕著な塩水で, 化石水と思われる。またCl濃度は含水層の深度に比例して増加し, また一出水孔についても時間の経過とともに上昇し, ついで下降を示している。
(3) 出水量も深度の増加につれて増大し, 一出水孔はおのおの特有の双曲線に近いdecline curveをもつて減衰している。
(4) 地表淡水および白亜系からの補給はないと思われる。双曲線近似の減衰曲線を描くということはここの化石水はかなりせまく局限された区域内を移動しうるだけで, 遠く移動することはないらしい-という意味で局限水量と考えてよさそうだ。
(5) 出水をもたらす水は含水層のfissure中に貯留されている水であり, 水の流動も主としてこのfissureを通じて行われるものであろう。
(6) これらの水は採掘に伴う計画的な水抜を行うことによつて経済的な管理が可能であろう。そのためにまず試験的な水抜井によつて各種の資料を検討することが必要である。

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© The Mining and Materials Processing Institute of Japan
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