日本鉱業会誌
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花輪鉱山産鉱石鉱物とその共生組織について
山岡 一雄
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1966 年 82 巻 944 号 p. 1039-1046

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抄録

1. 花輪鉱山には層状の黒鉱鉱床と, 塊状-レンズ状の石膏硫化鉄鉱床とがある。前者に属する鉱床には明通鉱床があり, 後者に属する鉱床には本山・三平・安代鉱床がある。
2. 同鉱山から産出する金属鉱物には, 黄鉄鉱・黄銅鉱・閃亜鉛鉱・方鉛鉱・四面銅鉱・斑銅鉱・輝銅鉱・方輝銅鉱・銅藍 (2次成), Cu-Fe-S系未知鉱物 (ほぼ (Cu-Fe) S2, Cu/Fe≒3)・磁鉄鉱・磁硫鉄鉱・赤鉄鉱・白鉄鉱などがあり, 粘土鉱物を除いた非金属鉱物としては石膏・硬石膏・重晶石・石英・螢石などがある。
3. 黒鉱鉱床の黄鉄鉱・黄銅鉱・閃亜鉛鉱・方鉛鉱にはコロフォーム組織がしばしば認められ, また石膏硫化鉄鉱床でも石膏鉱体中の黄鉄鉱・黄鉱鉱体中の黄鉄鉱・黄銅鉱・閃亜鉛鉱にはコロフォーム組織が認められることがある。硫化鉱物に見られるコロフォーム組織は, これらの鉱物が比較的低温の多成分膠状溶液かち晶出したことを暗示している。
4. 黒鉱鉱石中の閃亜鉛鉱のFeS含有量はほぼ1.7-6.0mol%であり, もつともFeS含有量の多いものは黒色の繊維状閃亜鉛鉱であり, もつとも少ないものは黒鉱を脈状に切る淡黄褐色の閃亜鉛鉱である。
5. 四面銅鉱には安四面銅鉱と砒四面銅鉱の両種が見られる。西安代-45mL産の砒四面銅鉱のAs, Sb, Zn含有量はそれぞれほぼ18.8%, 0.4%, 5%± であるが花輪鉱山産四面銅鉱の As: Sb の量比, Ag・Zn の含有量にはかなりの変動が見られるものと考える。
6. 磁鉄鉱・磁硫鉄鉱・赤鉄鉱は石英安山岩脈が火山砕屑岩質の母岩, および石膏硫化鉄からなる鉱床を貫く付近にのみ認められ, その成因は石英安山岩脈の迸入に密接な関係があるものと考える。ここに見られる磁硫鉄鉱は単斜型の磁硫鉄鉱である。

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© The Mining and Materials Processing Institute of Japan
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