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pH2付近におけるFe (III) イオンによる黄鉄鉱の酸化溶解に及ぼす陽イオンの影響
笹木 圭子恒川 昌美金野 英隆
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1996 年 112 巻 4 号 p. 231-237

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抄録

pH2付近におけるFe (III) イオンによる黄鉄鉱 (FeS2) の酸化溶解に及ぼす, 種々の陽イオン (アルカリ金属, アルカリ土類金属, 遷移金属イオン) の影響を, 溶液分析およびXPSにより検討した。Na+, K+, Mg (II), Ca (II), Ni (II), Zn (II) およびCd (II) イオンはほとんど影響を及ぼさなかった。それに対し, Pb (II) およびBa (II) イオンは黄鉄鉱から溶出した硫酸イオンと沈殿を生成した。また, Cu (I) イオンを添加すると, 黄鉄鉱からの硫黄および鉄化学種の溶出が抑制された。HSAB理論によると黄鉄鉱はやわらかい塩基であるが, Cd (II), Ni (II) およびZn (II) のようなやわらかい酸あるいは中間の酸は黄鉄鉱にあまり吸着せず, その溶解を抑制することもなかった。このことは, 上記の反応に及ぼす陽イオンの影響はHSAB理論によって説明できないことを示している。Cu (II) イオン存在下では溶解後の黄鉄鉱表面にCu (I) 化学種が生成しており, これはCu2Se中のCu (I) の状態に極めて類似していた。Cu (II) イオンは, Fe (III) イオンよりも優先的に黄鉄鉱のSサイトの反応活性部位に吸着し, 黄鉄鉱表面でCu (1) の状態に還元され安定化するものと推察され, このことが黄鉄鉱の溶解抑制をもたらしたものと考えられる。

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© The Mining and Materials Processing Institute of Japan
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