【目的】Peutz-Jeghers症候群(以下PJS)は全消化管に過誤腫性ポリポーシスを生じる常染色体優性遺伝性疾患である。当科に通院しているPJS4例について、病歴や経過を調査し、診療上の注意点を明らかにすることを目的とした。【方法】PJS患者4例の電子カルテから、病歴、当院通院開始後の経過、手術歴と内容、併存疾患、内視鏡施行歴とその結果を調査し、適正な評価・管理方法などを検討した。【結果】男性:女性=3:1。診断年齢は3歳〜43歳。3例で腸閉塞の既往、2例で腸重積の既往があり、全例で手術歴・腸管切除歴があった。手術回数は最小3回、最多6回で、平均4.5回であった。腸管切除理由は小腸内の巨大ポリープに伴う腸閉塞または腸重積が主であるが、ポリープ切除目的や切除後の出血・穿孔も含まれた。1例は経過中に肺癌・卵巣腫瘍を認め、手術加療を行った。全例で十二指腸〜大腸まで全ての臓器でPJ型ポリープを認め、1例では胃にもPJ型ポリープを認めた。切除した小腸ポリープは全て過誤腫性ポリープであったが、4例中2例で腸管外に悪性腫瘍を認めた(肺癌・卵巣腫瘍、膵管乳頭内粘液産生癌)。全例で小腸内視鏡およびポリープ切除を毎年行っていたが、腸管切除後の癒着により挿入難易度が高くなり、切除不能となったポリープにり腸重積が発生し、手術となる症例が見られた。【考察】PJS患者では年に1回程度の定期的な小腸内視鏡検査を含めた全消化管内視鏡検査を行い、サイズの大きなポリープを積極的に切除することが必須となるが、短期間で増大することも多く、可能な限り早期に診断し、内視鏡検査を反復してポリープ切除を試み、腸管切除の要因となりうる腸重積や腸閉塞を回避することが求められる。さらにPJSでは腸管外の発癌が見られるため、定期的な全身の画像検索も忘れてはならない。