【目的】OGIB患者における小腸カプセル内視鏡(CE)所見陰性例の長期予後からCE所見陰性OGIB患者の取り扱いと小腸外出血の診断能について検討する。
【対象・方法】検討1:2014年3月〜2021年7月に当科で小腸CEを施行し、全小腸観察可能であったOGIB患者536例のうち、CE所見陰性で無治療経過観察となった393例(男性222例、年齢中央値70歳)を対象(A群)とした。対照としてCE所見陽性で孤在性小腸責任病変に対して内視鏡治療を行い、CE再検にて所見陰性を確認したOGIB患者66例(男性41例、年齢中央値73歳)(B群)を用いた。これらについて、臨床的特徴、小腸再出血に関する危険因子を比較検討した。なお、当科では原則CE所見陰性OGIB患者に1年後のCE、再出血時には緊急CE施行の方針としている。検討2:初回CE時に小腸外出血を認めた64例(男性33例、年齢中央値74歳)を対象とし(C群),対照として再出血時に小腸外出血を認めた26例(男性12例、年齢中央値73歳)(D群)を用いて小腸外出血の診断能に関連する因子を検討した。
【結果】検討1:患者背景では、A群と比較しB群において有意に高齢であり,血中Hb値が低く、輸血率,Overt OGIBの割合が高かった。抗血栓薬服用者はA群に比べB群で有意に多く(33% vs. 48%、P=0.02)、併存疾患では心疾患がA群に比べB群で有意に多かった(24% vs. 41%、P<0.01)。小腸再出血率はA群がB群より有意に低く(2% vs. 32%、P<0.01)、小腸再出血時の責任病変は、血管性病変がA群よりB群で有意に多かった(1.6% vs. 29%、P<0.001)。小腸再出血に関して、多変量解析では「初回出血時のCE所見陽性」のみが独立した関連因子であった。検討2:C群はD群と比較し血中Hb値が有意に低値で、最終出血から48時間以内のCE施行例が有意に多かった(41% vs.15 %、P=0.02)。
【結語】OGIB患者は,CE所見陰性であれば再出血はほとんどなく、原則経過観察不要と考えられた。また、最終出血から48時間以内のCE施行は小腸外の出血源の診断にも有用であった。