【背景】小腸Dieulafoy病変は、内視鏡観察時に自然止血されている可能性があるため確定診断と治療が遅れる傾向を有する。一方では、Dieulafoy病変の臨床的特徴を把握しておくことによって診断のタイミングや治療戦略を事前に検討できるかもしれない。本研究の目的は、当院で経験された同病変の臨床的特徴を後方視的に調査し、その最適な診断と治療につき検討することであった。
【対象・方法】対象は当院において2003年6月から2022年7月の間に小腸出血が疑われダブルバルーン内視鏡(以下DBE)を施行し、Dieulafoy病変と診断、内視鏡治療を受けた36例であった。本研究におけるDieulafoy病変の定義は、粘膜面の変化は露出血管部のみとし、付着する血栓を認める場合と露出血管からの噴出性かそれに準じる活動性出血を認める場合とした。臨床的背景、治療方法などを検討した。
【結果】男性/女性は19/17例、平均年齢は71±10歳であった。33例でなんらかの基礎疾患を有していた。抗血栓薬の使用を19例で認め、ワーファリン10例、バイアスピリン7例(重複あり)の順で多かった。累計の出血エピソードは中央値で2回(1-18回)であった。最低血中ヘモグロビン値は5.9±1.7g/dl、赤血球輸血は2例以外の全例で行われていた。症状発現からDBEまでは中央値18日(2-63日)であった。DBE時の所見について、病変部位は深部十二指腸、上部空腸、中部空腸、下部空腸、中部回腸、下部回腸で各々3、18、8、2、2,6例で認められた(重複あり)。治療はクリッピング34例、APC凝固2例であった。偶発症は再出血10例(27.7%)、急性膵炎1例であった。
【結語】小腸Dieulafoy病変は診断に苦慮し、治療までに時間と輸血処置などを多く要していた。本病変が疑われた際には早めの内視鏡検査が検討される。