日本小腸学会学術集会プログラム・抄録集
Online ISSN : 2434-7019
Print ISSN : 2434-2912
第60回日本小腸学会学術集会
セッションID: O3-1
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一般演題 口演3 腫瘍
3年間の経過で増大し出血をきたした回腸神経鞘腫の1例
*坂岡 雅史永塚 真梁井 俊一熊谷 秀基八重樫 瑞典上杉 憲幸佐々木 章菅井 有松本 主之
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抄録

【症例】72歳女性。【主訴】心窩部痛、血便。【既往歴】副腎腺腫、子宮筋腫術後、高血圧、陳旧性脳梗塞、ピロリ菌除菌後。【内服歴】アムロジピン、クロピドグレル、フェキソフェナジン、エソメプラゾール。【現病歴】2019年スクリーニング目的に施行した造影CTで骨盤内小腸に10mm大の腫瘤を指摘され当科紹介となった。経肛門ダブルバルーン内視鏡、カプセル内視鏡で回腸に血管腫とその肛門側にびらんを伴う10mm大の粘膜下腫瘍を認めた。PET-CTでは小腸にFDG集積は認めなかった。症状もないことから以後は関連病院で経過観察をうけていた。2022年5月血便を主訴に前医を受診し、採血で貧血の進行を認めたため入院となった。上・下部内視鏡検査では出血源は認めなかったが、その後も血便を認めたため小腸出血が疑われ当科転院となった。【経過】造影CTで回腸に15mm大の造影効果を伴う腫瘤性病変を認めた。カプセル内視鏡で下部小腸に既知の血管腫と思われる青色の粘膜下様隆起を認めたが、肛門側の粘膜下腫瘍は判然としなかった。経肛門ダブルバルーン内視鏡では既知の血管腫とその10cm肛門側に頂部に潰瘍を伴う15mm大の粘膜下腫瘍を認めた。出血源と考えられ当院外科に紹介し、腹腔鏡補助下小腸部分切除術が施行された。粘膜下腫瘍の病理組織は粘膜下層を主座に紡錘形異型細胞の増殖を認めた。免疫染色ではvimentin陽性、S-100陽性、desmin陰性、KIT陰性であり神経鞘腫と診断した。【考察】神経鞘腫は頭部や四肢に好発するが、消化管での報告例は少なくその大部分は無症候性であることが多い。しかし本症は血管に富み腫瘍発育の過程で潰瘍を形成し出血をきたしうる。本症例では腫瘍増大と抗血小板薬内服が出血に寄与したと考えられる。【結語】出血を来たしうる小腸粘膜下腫瘍として神経鞘腫も念頭におくべきである。

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© 2022 本論文著者
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