1990 年 32 巻 3 号 p. 427-433
77歳, 男性。初診の7年前より発生した右母指球部の糜爛局面を, 組織学的検索によりeccrine ductocarcinomaと診断した。広範切除後経過良好であったが, 7年後に右下肢に広範な皮膚転移を生じて来た。化学療法により一時的に軽快をみたが, 副作用のため続行不能となり, 約5カ月後に死亡した。今回新たに組織学的並びに免疫組織化学的に検索を行い, CEA陽性, S-100陽性の所見を得たので, その他抗ケラチン抗体やEMAの所見と併せて本腫瘍の分化傾向についての若干の考察を行った。