抄録
本研究の目的は「失敗した対応にのみ着目して提案された災害初動対応の見直しは,初動対応全体を俯瞰して見ると,必ずしも適切な見直しとなっていないことがある」という仮説を検証し,それが起こりうる条件を明らかにすることである.そのために,東日本大震災における東海村を事例にとりあげ,初動対応に含まれる要素の整理,評価,および,成功または失敗を導いた要因の抽出を行った.その結果,初動対応における行動や判断の基準をマニュアル化するという見直しが,かえって現場の臨機応変な初動対応を阻害しうることが示唆された.このような場合には,マニュアル化する部分と現場の判断に任せる部分との区切りを明確に示すことが重要であると考えられる.