2002年に発覚した原子力発電所トラブル隠し問題は, さまざまな要因が複雑に関連することで生じた. このような社会問題を解析するためには, 問題の構造を可視化することが重要である. その際に, 要因間の因果関係だけでなく, 要因を分類・整理して得られる階層構造を呈示することは, 問題の解析にたいへん有効である. しかし, これまで階層的な因果関係を可視化する技法は, ほとんど研究されていなかった.
そこで本論文では, 階層的因果関係を可視化する手法を提案し, その手法を用いた可視化システムのプロトタイプの概要について述べる. さらに, そのプロトタイプを原子力発電所トラブル隠し問題に適用して得られた解析結果について報告する.