2005 年 3 巻 p. 175-185
文化遺産を自然災害から守り後世に継承することは,社会科学の一つの大きな使命である.想定される自然災害から文化遺産を守るためには,まずそのもの自身の持つ性能を正しく評価することが必要である.本研究では,文化遺産の一つである懸造形式を有する伝統木造建築物の耐震性能に関する研究の一環として,国宝清水寺本堂を研究対象とした構造特性の研究を行った.本研究は,当該建物の建物調査及び文献調査に基づく構造図作成に始まり,作成した構造図を基にした固有値解析と,地盤と建物に対する常時微動測定の実施を通じて,対象建物の振動特性の定量的把握を行った.さらに,目視経年変化調査及び含水率測定を行うことで,当該建物の現状の経年変化状況を把握した.