測地学会誌
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八丈島東方沖地震(1972)前の三宅島における著しい平均海水面変化について
山口生知
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1973 年 19 巻 1 号 p. 34-41

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抄録

 海岸昇降検知センターの資料から平均海水面変化を調べてみると,八丈島東方沖地震前には,三宅島における平均海水面変化は,その附近の布良,小名浜,油壷などと比較して,甚だしく大きく変化しているのが見られる.そして,この変化の模様は1941年のリスボン沖大西洋の海底地震の際のリスボンにおける平均海水面の著しい変化とよく似ているのは面白いと思う. つぎに,油壷の年平均海水面変化をみると,関東大地震,東南海地震および南海道地震前には急激に下っているのが,三陸方面や房総沖方面の地震のときには急激に上っているのが認められるので,油壷を中心として西方海域の大地震と東方海域の大地震とを区別して,また,年代によって地震の資料に対する信頼度が異なると考えて,西方のT1,T0,東方のT3と3つの周期を計算してみた・地震の規模については7.4以上のもののみをとって,T1=(91±15)年,T2=(65±13)年,T3=(29±6)年を得た.なお,目下のところ,油壷の年平均海水面は上昇をたどっているから,関東大地震程度の大地震は起こらないものと推測される.また,三陸方面では,1933年以来,磐城沖地震,房総沖地震と規模7.5以上のものが3つも起こっているから,関東地方に被害を与える規模8程度の地震のエネルギーは少しずつ解放されているものと想像される.

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