測地学会誌
Online ISSN : 2185-517X
Print ISSN : 0038-0830
ISSN-L : 0038-0830
海洋基準点の位置決定
山崎 昭
著者情報
ジャーナル フリー

1975 年 21 巻 3 号 p. 159-169

詳細
抄録

 地表の70%を占める海洋における測地学的データの不足は,測地学の進歩にとって大きな障害となっている.海洋においても陸地と同様に高精度のデータを得るためには,陸上の三角点や重力点等に相当する基準点を海洋にも設置することが不可缺と考えられている.このような基準点は,海洋における測地観測の基準点となるのみでなく,その他の海洋における科学観測の基準点ともなる. 最近,このような目的を持つ基準点を海底に設置する試みが盛んに行なわれているが,なかでも3個の音響トランスポンダで構成される基準点システムが最も有望である.海底に置かれたトランスポンダの位置決めには,現在,陸上に基地を持つ電波測位システムと,船― トランスポンダの音波測位システムを併用する方法が採用され,その取得データの解析には,あらかじめ正確な船位を求め,これと音波測距データを結びつける方法がとられている.したがって,この方法では沿岸から遠く離れた沖合での基準点の正確な位置決めは難かしい. この問題を解決するため,この報告では,3組の音波測距データのみにて,まず,トランスポンダ相互間の距離と,深さを一緒に求める解析法が提案される.観測方程式は,海面に投影された3組の距離ベクトル(船一トランスポンダ)が常に同一平面(海面)上に存在する条件から導かれる.適当な仮定をおくことにより,深さ3000mにおかれたトランスボンダに対し,音波測距精度10-3の場合,±1mの相対測位精度が見積られる.本方式を衛星航法システムのNNSSと併用することにより,沿岸のみならず地球上すべての海域において,現在陸上においてNNSSで達せられる精度に近い精度での測地位置の決定が期待される.

著者関連情報
© 日本測地学会
前の記事 次の記事
feedback
Top