測地学会誌
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微分スケールファクター法による測地図形の決定とその誤差評価
藤井 陽一郎仲野 浩次
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1986 年 32 巻 4 号 p. 282-289

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抄録

 茨城大学の地球科学教室では,昭和56年度にレーザーレンジャー5型(07B-5003)を購入し,今日まで各種の試験的な観測を実施してきた.今回は,微分スケールフアクター法による測地図形の決定とその誤差評価についての検討結果について報告する. 野外で観測したのは単三角形である.A,B,Cの3点で観測した辺長に加えるべき界ケールフアクターの補正分(微分スケールフアクター)をd,Sa,dSb,dScとすると△0t=[dSa,dSb,dSc]と辺長測定値lへの補正ベクトルVとから次の形の条件式をうる.AV+B△0=w(1)A,Bは計画マトリックス,ωは観測から決る定数マトリックスである.(1)の正規方程式係数マトリックスは特異となる.そこで次の拘束式を与える.c△0=0(2)ここでC=[111].この拘束条件つきの(1)の正規方程式は形としてはX△1=Y(3)となり,このXは特異でなく,△1が求まりこれより△0も求まる.lを観測辺長,Lを最終決定値とするとA点からB点へ観測したときの結果はLab=lab+labdSa+Vab(4)のごとく求まる.△とVの誤差評価は(1)(2)の偽逆行列による解法とeに関する分割マトリックスによる解法と2通の方法で求めたが,分割マトリックスの方法のほうが精度がよいことが分った.判明したことはつぎのごとくである.(1)大気の不安定の状態の観測が標準値と1~2cm異なっていても微分スケールフアクター法で標準値に近づいた結果が得られ.(2)内部精度も数mmていどにおさえることができる.(3)しかしながら・決定値がなお標準値に比べ一定の方向に偏つて求まつている場合もある.(4)この方法では辺長の絶対値よいも三角形の形はより高精度で決るので,せん断歪の決定に有効である.

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