測地学会誌
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光波測距における大気補正の一般化
藤井 陽一郎宮本 秀晴
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1987 年 33 巻 3 号 p. 205-214

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抄録

 光波測距において測距儀の表示する測定値をDr,標準大気補正をd.Snとすれば,任意条件下では追加補正dCが加えられることによって正しい測定値SがS=Dr+ΔSn+ΔCのごとく求まる.dSnは,大気中の平均屈折Nmを両観測点での気温・気圧の測定値の平均値Tm,P伽を使って推定して容易に計算できる.またΔCは地表と光路の間の温位の差ae,Cを光路Xに沿って積分して求められる.
ΔC=10-6・∫S 0 Δθxdx
ここにNmはTm,pmから求めた平均屈折率で,sは全光路の長さである[ANGUS・LEPPAN and BRUNNER].補正dCの計算には地形に関する数値積分のほかヒートフラックスHや摩擦風速U*などの項が含まれる. ところで,測定路線に沿う平均的な光路の高さhとオブコフの長さLとから接地層の大気の安定度は3つに分けられ,それぞれについてde,cの推定に必要な経験式が提案されている[ANGUS・LEPPAN].この提案を採用して大気安定度の3つの領域に対応した不安定(主として昼間)と安定(真夜中)の場合の計算を遂行し,新たにacを求める式をつくった. 新たな大気補正の一般式の有効性を確かめるために1985年7月から8月にかけて地表状態の異る2ヶ所において試験観測を実施した.いまある辺長について任意時刻での観測に標準大気補正のみを適用したときのS.D.をA,一般化大気補正を試みたときのS.D.をBとして一般化大気補正適用の有効率をη={A-B)/A}×100で定義すると,全体として数%程度の精度の向上が認められ,昼間の観測も少しはよくなることが分った.しかしながら辺長が10km以上の場合には逆に悪くなった場合もあり,予想されたごとくこの方式は数km程度以下の辺長測定にしか適用できない. 計算の過程に現われる最大の粗い近似はヒートフラックスの推定であり,この点になお改良の余地がある.ヒートフラックスを実測することもできるが,今のところ手間がかかりすぎるので,もっと効率的な推定式を考案する必要がある.

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