測地学会誌
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地震予知のための横穴式地殻変動連続観測研究戦略に内在する困難
橋本 学
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2007 年 53 巻 2 号 p. 183-195

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抄録

 地震予知を量的とした横穴式連続観測による地殻変動研究は,暗礁に乗り上げている.その最も重要な理由のひとつは,戦略的な観点からの研究計画の欠如であろう.特に,その観測システムの硬直性にもかかわらず,そのターゲットである地震の前駆的地殻変動に関する十分な知識がないまま研究が始まった.その時代背景を考慮すれば許容されるかもしれないが,その後の学問の進展に対応できなかった観測システム・体制にこそ最大の問題が内在する.さらには,情報の非公開性も大きな困難のひとつである.本論文では,横穴式地殻変動観測研究の歴史を簡単に検討し,本質的な問題点を指摘する.さらに,この検討に基づいて横穴式地殻変動観測研究は地球ダイナミクスに特化すべくターゲットを移し,地震研究に関連する歪・傾斜変化の研究についてはボアホール式観測に重点を置くことを提案する.

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