測地学会誌
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パワースペクトルを介した時間領域における地殻変動データの検出能力評価
山本 剛靖小林 昭夫勝間田 明男森 滋男
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2008 年 54 巻 2 号 p. 81-91

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抄録

様々な時定数をもつ地殻変動現象の検知能力を評価するために, 地殻変動の時系列データから, パワースペクトルを介して, 時間領域における検出レベルが計算された. 解析対象としたのは, 東海および関東地域に設置されている気象庁の体積歪計と多成分歪計, 並びに国土地理院のGPSのデータである. 歪計データのパワースペクトルは, 全周波数領域において, 周波数fの-2乗に従い, 一方, GPSデータのパワースペクトルは, およそ100日より短周期側でホワイトノイズ, それより長周期側でf-2に近づく. パワースペクトルから評価されたデータのゆらぎは, 定まった階差時間において求められているノイズレベルと調和的である. 評価された歪計の検出レベルは観測点ごとにばらつき, それは歪計の設置深度や周辺媒質に依存しているようである. 歪計の検出レベルは歪速度に換算して, 時間間隔Tに対してT-0.5に従い, GPS基線歪の検出レベルはT-1に従う. 東海地域で発生した長期的SSEと短期的SSEによって引き起こされた線歪, 面積歪及び変位と求められた検出レベルと比較することによってSSEの検知能力を調べた結果, 求められた検出レベルは実際の変動検知結果をよく再現しており, 検知能力の指標として適切であることが示された. その比較から, GPSによって2つの種類のSSEを観測することはかなり難しいが, 歪計では長期安定性の改善により長期SSEの観測の可能性があることがわかった.

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