本研究の目的は「つり橋わたれ」という教材においてどのような指導が行われてきたのかを明らかにすることにあった。その理由はこの教材に,個と集団の二項対立構造が内包されており,その構造が現代の学校教育においてそぐわなくなってきていることがあった。
研究の方法は,教科書の授業(単元)の目標と「学習の手引き」の調査,それから「実践報告書」の分析によった。この結果,「つり橋わたれ」の指導では,これまでトッコの心情と変容を中心に読み取ってきたことを明らかにした。また,そのような人物主義・心情主義の指導では指導目標に到達するための解釈に収斂されてしまう危険性があること,さらに,個と集団の構造を追認することにはなるが,批判的に読むことにはつながらないことを指摘した。
多様性を尊重する立場からすると,今後は,人物主義・心情主義とは違った読み方を模索する必要がある。今後の課題としては,人物主義・心情主義とは違った読み方について提案することや,これまでの文学教材の実践史研究によって解明された事実を踏まえつつ,他の教材を扱った授業に関しても横断的な調査を行い,国語科教育における授業実践の成果と問題の整理を行うことが挙げられる。