2025 年 66 巻 2 号 p. 61-75
本研究は,大学生による読書会における,対話内容と対話そのものを分析することを目的とした。3人のメンバーからなる3つの小グループが,1冊の本について対話を行った。対話は逐語的に文字起こしし,渡邉(2018)を参考にKJ法(川喜田,1996)を用いて対話から意味カテゴリーを生成した。その結果,以下6つのカテゴリーに分類された:「事実に基づく物語分析」,「登場人物の感情追体験」,「作品理解の試み」,「事実に基づく自己分析」,「自己の感情体験」,「自分を含めた人間一般の理解の試み」。これらのカテゴリーは,2つの上位カテゴリーに分類された。前者3つは「本についての語り」,後者3つは「自分についての語り」である。対話の内容分析では,参加者が一冊の本について様々な視点から語り合うことで,共同で解釈を構築していくプロセスが明らかになった。