Synthesiology
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研究論文
遺跡が語る巨大地震の過去と未来
- 境界領域「地震考古学」の開拓 -
寒川 旭
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2009 年 2 巻 2 号 p. 91-100

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抄録

考古学の遺跡発掘調査で地震の痕跡が見つかることが多いが、従来は調査の対象とされずに見逃されていた。筆者は、1988年に「地震考古学」を提唱し、遺跡の地震痕跡を用いた研究方法を広く普及させた。これによって、考古学と地震関連分野との境界領域が開拓されて様々な成果が得られた。南海トラフで発生する巨大地震について過去2千年間の発生年代がわかり、次の発生を考える基礎資料となった。内陸の活断層による地震痕跡も数多く見出されており、京阪神・淡路地域では1596年慶長伏見地震での地盤災害が詳しくわかった。液状化現象についても、遺跡での観察結果から新しい知見が得られた。また、地震痕跡は一般市民にも理解しやすいことと、マスメディアにも取り上げられる機会も多いことなどにより、地震災害軽減のための活動へ大きく寄与している。

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© 2009 独立行政法人 産業技術総合研究所
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