抄録
視覚障害者が歩行するためには、音を手がかりに周囲の様子を把握する技能を習得する訓練が必要である。そのために著者は、“安全な仮想空間の中で訓練を実現する技術を開発してリハビリテーションの現場に導入する”ことを目指し、訓練システムの開発を行った。この訓練システムの実現のために、①音による空間認知のメカニズム、②メカニズムを再現する3次元音響技術、③3次元音響演算用ハード/ソフトウエア、④頭部位置方向計測技術、⑤訓練カリキュラム等の基盤研究および要素技術の開発を行った。構築した訓練システムの有効性を検証した結果、このシステムがこれまでの実環境訓練よりも有効であることを確認した。2010年9月より、訓練システム簡易版が視覚障害関係者に配布され、指導員養成課程等で活用されている。