2015 年 28 巻 1 号 p. 1-11
ICTの急速な発展により、人々の生活や企業の活動は大きく変化した。このような状況を情報セキュリティの観点から眺めると、組織および組織構成員によるICTの利用環境には質的な変化が生じており、その結果個人および組織は、今までに直面したことのない新たな脅威に身をさらす可能性が高まっている。
本研究の目的は、昨今のICTの急速な発展に伴う利用環境の変化、それに伴う新たな脅威の顕在化とその特徴を明らかにし、それらに対応した情報セキュリティ確保のための新たなアプローチの方向性と基本的考え方を提案することである。本論文で提案する新たなアプローチ(本研究ではオブジェクトアプローチと呼ぶ。)とは、どのような組織にも普遍的に適用できる考え方で、利用環境の変化に不変な要素、すなわちデータに着目し、データの守るべき特性を維持する方策を最優先することを基本とするものである。