2019 年 32 巻 1 号 p. 60-68
2017年度のIT監査保証の判断基準研究プロジェクトでは、ビジネスとシステムの最新動向としてFinTech、人工知能(AI)、各国のIoT政策と日本のSociety5.0の研究を、監査・評価手法等にかかるグローバルな標準・基準の動向としてAICPAの「Information Integrity」の翻訳・研究と、新COSOERMの研究を行った。本稿ではその成果をもとに、Society5.0が前提とする「スマート社会」のITサービスを提供する組織が必要とする能力として、魅力的なサービスを開発し続ける能力、サービスの安心と安全を提供し続ける能力、サプライチェーン全体の信頼を確実にする能力の3つの組織能力を示し、その実現方法を考察する。そして、サプライチェーン全体の共通目標を可視化・共有化し、共創を推進するためのサプライチェーン全体のガバナンスを整備すること、およびサプライチェーンを構成するそれぞれの組織が、ITサービスの継続的・自動的なモニタリングと監査を行って、ガバナンスと内部統制の状況とともに継続的に開示し、サプライチェーン全体の信頼を確保することを提言する。