日本原子力学会和文論文誌
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論文
軽水炉体系における照射後試験解析による新たに評価された核分裂収率の妥当性確認
磯 敦也竹田 敏北田 孝典
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2022 年 21 巻 3 号 p. 155-166

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Abstract

Fission yield is an important physical quantity used to evaluate the amount of fission products after irradiation. The fission yield used in Japanese Evaluated Nuclear Data Library (JENDL) employs ENDF/B data for many nuclides. On the other hand, the fission yield has recently been evaluated in Japan on the basis of various theories. As one of the evaluations, the fission yield has been newly evaluated by a team from Tokyo Institute of Technology (Tokyo Tech). It is necessary to confirm the validity of the fission yield evaluated by Tokyo Tech because the fission yield is used as the sublibrary of JENDL-5. In this study, the analysis of the post-irradiation examination results of UO2 fuel and MOX fuel was performed for the validation of the fission yield evaluated by Tokyo Tech, and the result is compared with that of JENDL FP Fission Yields Data File 2011 (FPY-2011). Using the integrated burnup calculation code system SWAT4.0, the results of the post-irradiation examinations of Fukushima-Daini-2 and Beznau-1 were analyzed. The difference in the production of fission products observed from the fission yields evaluated by Tokyo Tech and those by FPY-2011 is about 5% at maximum.

I. 緒言

核分裂収率は,核分裂生成物(Fission Products:FP)の生成量評価を実施する上で非常に重要な物理量である。核分裂収率データは核データのうちの1つとして評価されている。現在における代表的な評価済み核データライブラリとしては,ENDF,JEFF,JENDLが挙げられる。ENDFは米国の評価済み核データファイルで,最新版(2020年12月時点)はENDF/B-VIII.01である。ENDF/B-VIII.0の核分裂収率データは前バージョンのENDF/B-VII.12のデータを採用しており,中性子誘起核分裂収率31核種,自発核分裂収率9核種のデータが評価されている1。ENDF/B-VII.1は主にEnglandとRiderによる核分裂収率の評価3を使用している。JEFFはヨーロッパを中心に開発されている評価済み核データライブラリであり,最新版はJEFF-3.34(2020年5月時点)である。JEFF-3.3では,新しく公開された実験データベースを参照したことや質量分布および電荷分布をGEFコードによってモデル化したことによって前バージョンのJEFF-3.25から改善された。JEFF-3.3では中性子誘起核分裂収率19核種,自発核分裂収率3核種のデータが評価されている。日本の評価済み核データライブラリであるJENDLは,汎用ファイルと利用分野を限定した特殊なデータをまとめた特殊目的ファイルに大別される。汎用ファイルであるJENDL-4.0の核分裂収率については,中性子輸送計算コードとして連続エネルギー法に基づく汎用中性子・光子輸送計算モンテカルロコードMVP6を用いた統合燃焼計算コードシステムSWAT4.07を用いて,BWR使用済みUO2燃料のPIE解析により臨界性評価の観点で核種組成を適切に解析できていることを確認している8,9。加えて,PWR使用済みMOX燃料についてはUO2燃料と同様の予測精度であることが示されている10。以上より,JENDL-4.0の核分裂収率で得られる核種組成について,臨界性の観点で妥当性を有するものと考えられる。また,JENDL-4.0の中性子誘起核分裂収率31核種,自発核分裂収率9核種の核分裂収率データを含めた特殊目的ファイルとして,JENDL FP Fission Yields Data File 2011(FPY-2011)が作成された11。FPY-2011はENDF/B-VI3をベースとしており,2012年の公開後に,異常な核分裂収率データの修正等を施す更新が行われている。FPY-2011とENDF/B-VIの核分裂収率ファイルでは扱われている核異性体や崩壊チェーンが異なるため,FPY-2011には修正が施されているが,基本的にENDF/B-VIの核分裂収率を採用している11。一方で,日本で独立した核分裂収率の評価に対する知識と技術を集積し,評価手法を確立することが期待される。このことを踏まえて,日本においても核分裂片の質量数分布と全運動エネルギーを精度よく再現できる4次元ランジュバン模型の開発12など核分裂収率に関する研究が行われている。その研究の1つとして,東京工業大学の椿原らは核分裂収率を実験核反応データベースから取得された実験データをもとに,偶奇性の評価やアイソマー比などに理論計算を適用することにより,中性子誘起核分裂収率31核種,自発核分裂収率9核種について新たに独自評価した13。評価手法としては,殻補正エネルギーによる偶奇性の評価や1,000核種を超える核分裂片の統計崩壊に対してHauser-Feshbach統計崩壊理論14を適用することにより,種々の核分裂観測量を同時に中性子入射エネルギー依存で計算できるようにした。その作成された核分裂収率は,日本原子力研究開発機構の核データ研究グループにより次の日本の評価済み核データライブラリへの採用が検討されているが,その前に従来の評価済み核データライブラリと比較して,その核分裂収率の妥当性確認を行うことが望ましい。

本研究の目的は,東京工業大学の椿原らが評価した核分裂収率(以下,Tokyo Tech)を軽水炉体系で用いた場合の妥当性を確認することである。そこで,本研究では軽水炉において主要なUO2燃料およびMOX燃料に対する核分裂収率の妥当性を確認するため,照射後試験(PIE)解析を行った。JENDL-4.0の核分裂収率により臨界性評価の観点で使用済みUO2燃料およびMOX燃料の核種組成が適切に解析できていること810,JENDL-4.0の核分裂収率データが含まれるFPY-2011では新たな知見を反映させるための修正が施されてきたこと15を踏まえ,本研究ではFPY-2011を用いた場合の結果と比較することで,Tokyo Techを用いた場合の結果の妥当性を議論する。UO2燃料およびMOX燃料を用いた典型的な原子炉として,それぞれ福島第二原子力発電所2号機,Beznau-1号炉をPIE解析の対象とした。一般的なPIEにおいては,燃焼度の指標となるNdや臨界性に影響を与えるSmおよびEuが測定されており,福島第二原子力発電所2号機およびBeznau-1号炉のPIEにおいてもそれらの核種が測定されているため,これらのPIEについて解析を行った。また,椿原らの検討13では代表的な中性子スペクトル場での断面積情報を用いたORIGEN216の解析結果を示しているが,測定位置における中性子スペクトルを考慮することで結果の精緻化が期待できる。また,Tokyo TechとFPY-2011のC/E値の差異が示されているが,差異が生じた要因までは議論できていない。このため,本研究ではTokyo TechとFPY-2011のC/E値の差異の要因について,燃焼チェーン上の周辺核種も含めて考察を行った。

II. 計算条件

本研究では,照射履歴および燃料集合体仕様などのPIEデータに基づいて統合燃焼計算コードシステムSWAT4.08によって燃焼計算を実施し,得られた核種組成の計算値とPIEデータの核種組成の測定値の差異を評価する。計算値と測定値の差異について,FPY-2011を用いた結果とTokyo Techを用いた場合の結果を比較し,妥当性を議論する。SWAT4.0の中性子輸送計算コードとして連続エネルギー法に基づく汎用中性子・光子輸送計算モンテカルロコードMVP第3版6を使用し,1バッチ当たりのヒストリー数を10,000,有効バッチ数を200とし,総ヒストリー数を2,000,000とした。MVPでは評価済み核データライブラリとしてJENDL-4.0を使用した。また,SWAT4.0の燃焼計算ではJENDL-4.0に基づくORIGEN216用断面積ライブラリセットORLIBJ4017を使用した。核分裂収率の違いによる影響を確認するためには,ORLIBJ40の核分裂収率のみを変更することが望ましい。そこで,ORLIBJ40の核分裂収率のデータのみをTokyo TechまたはFPY-2011で置き換えた。ORLIBJ40では232Th,233U,235U,238U,239Pu,241Pu,245Cm,249Cfの核分裂収率が使用されているため,Tokyo TechおよびFPY-2011における上記8核種の核分裂収率を使用した。Tokyo TechまたはFPY-2011において核分裂収率が与えられているがORLIBJ40において扱われていない核種については,JENDL FP Decay Data File 2011(FPD-2011)11に格納されている半減期と崩壊分岐比を用いて,ORIGEN2が計算で評価する核種としてORLIBJ40にその核種のデータを新たに追加した。ただし,Tokyo TechおよびFPY-2011のどちらにも第2励起状態の核種の核分裂収率が存在するが,ORIGEN2コードでは第2励起状態の核種を扱うことができないため,第2励起状態の核種の核分裂収率にFPD-2011の崩壊分岐比をかけ合わせた値を分岐先の娘核種の核分裂収率に足し合わせた。

UO2燃料に対するTokyo Techの妥当性確認を行うため,福島第二原子力発電所2号機の燃料集合体(2F2DN23)から得られたPIEデータ18を使用した。2F2DN23はチャンネルボックス内に濃縮度の異なる5種類のUO2燃料棒と1種類のUO2-Gd2O3燃料棒,2本のウォーターロッドで構成されている。PIEサンプルを含むUO2燃料棒はSF98と名付けられており,測定試験ではSF98から8サンプルが取得されている。また,この燃料棒の有効長約3,710 mmの内,上下約155 mmには天然ウラン領域が存在している。天然ウラン領域およびその近接領域に位置する燃料は軸方向の中性子束分布の変化が大きく,2次元単一燃料集合体体系では十分な解析精度が得られない可能性があるため,天然ウラン領域から離れたSF98-3サンプル(235U濃縮度3.9 wt%)を解析対象とした。2F2DN23の集合体幾何形状とSF98燃料棒の位置をFig. 1に示す。SWAT4.0による燃焼計算では,Fig. 1に示す2次元単一燃料集合体体系とした。サンプルの最終燃焼度は36.94 GWd/t,燃料温度は900 K,被覆管温度は600 K,冷却材温度は556 K,ボイド率は3.0%とした8。また,Gdの燃焼による変化を詳細に追うため,燃料集合体体系中の燃料棒すべてを同心円状に同体積で10分割して燃焼計算を実施した。参考文献18)の照射履歴を再現した上で,燃焼初期の1 GWd/tまで燃焼ステップ幅を0.1 GWd/tとし,その後20 GWd/tまではステップ幅を1 GWd/t,20 GWd/t以降はステップ幅を2.5 GWd/tとした19

Fig. 1

Fuel assembly geometry and PIE sample position taken from Fukushima-daini-2

MOX燃料に対するTokyo Techの妥当性確認を行うため,Beznau-1号炉の燃料集合体(M308)から得られたPIEデータ20を使用した。M308はPu富化度の異なる3種類のMOX燃料棒と制御棒案内管,炉内計装案内管で構成されている。M308からは6サンプルが取得されており,サンプルはStudiecentrum voor Kernenergie-Centre d'étude de l'Energie Nucléaire(SCK.CEN)とPaul Scherrer Institute(PSI)によってそれぞれ測定されている。その中でも実験誤差が小さかったSCK.CENによって測定されたBM5サンプルを解析対象とした。M308の集合体幾何形状とBM5サンプルの位置をFig. 2に示す。SWAT4.0による燃焼計算では,Fig. 2に示す2次元単一燃料集合体体系とした。サンプルの最終燃焼度は56.6 GWd/t,燃料温度は900 K,被覆管温度は600 Kとした。冷却材温度は詳細な履歴があるため,各燃焼ステップにおいて564~569 Kとした20。また,燃焼度ステップは,福島第二原子力発電所2号機のPIE解析と同様のステップ幅を設定した。

Fig. 2

Fuel assembly geometry and PIE sample position taken from Beznau-1

III. 計算結果

前述した計算条件をもとに,福島第二原子力発電所2号機のPIE解析を行った。福島第二原子力発電所2号機のSF98-3サンプルにおける計算値と測定値の比(C/E値)および測定誤差をFig. 3に示す。ここで,測定値および測定誤差は,Sm同位体については測定時点のものであり,それ以外の核種については取り出し直後へ補正されたものである。本研究の計算条件が妥当であることを確認するため,主要な核分裂性核種である235U,238U,239Pu,241Pu,燃焼度の指標となる148Ndの核種の生成量の計算値が測定値と精度よく一致していることを確認した。Fig. 3より,235U,238U,239Pu,241Puの計算値は5%以内で測定値と一致しており,148Ndの計算値と測定値の差異も1%未満と精度よく一致している。このことから計算に用いた燃焼度の評価値が妥当と考えられる。核分裂生成物の結果をみると,Tokyo Techを用いた場合とFPY-2011を用いた場合で全体的に同等の結果が得られた。Tokyo Techを用いた場合とFPY-2011を用いた場合のC/E値の差異は最大でも154Euの5%程度に抑えられており,PIEで測定された核種について,Tokyo Techは従来の核分裂収率とおおむね同等の差異であることが確認された。なお,SWAT4.0の中性子輸送計算コードにMVP第3版を使用しているため,燃焼計算結果の核種生成量には統計誤差が含まれる。その統計誤差を推定するために初期乱数を変更した計算を3回行った結果,FPの生成量の差異は最大0.6%であった。Tokyo Techを用いた場合,154EuのC/E値は0.97,FPY-2011を用いた場合のC/E値は1.02であり,FPY-2011を用いた場合の方が1に近いが,どちらも実験誤差3%の範囲内である。

Fig. 3

C/E values in analysis of UO2 fuel

また,前述の計算条件をもとに行ったBeznau-1号炉のBM5サンプルにおけるC/E値および測定誤差をFig. 4に示す。ここで,測定値および測定誤差は,取り出し直後へ補正されたものではなく,測定時点のものである。Fig. 4においても,主要な核分裂性核種である235U,238U,239Pu,241Puの計算値は5%以内で測定値と一致しており,148NdのC/E値も1.00と精度よく一致していることから計算に用いた燃焼度の評価値が妥当と考えられる。244PuのC/E値は40%程度過小評価されているが,実験誤差が50%と大きいため実験誤差内である。核分裂生成物の結果をみると,Tokyo Techを用いた場合とFPY-2011を用いた場合で129I,153Eu,154Eu,155Eu,155GdのC/E値の差異は3~5%程度であった。なお,UO2燃料のPIE解析と同様に,初期乱数を変更した計算を3回行った結果,その5核種の生成量の差異は最大0.8%であった。154Euおよび155Gdについては,Tokyo Techを用いた場合にC/E値の改善がみられ,計算値は測定値と1%未満で一致している。129I,153Eu,155Euについては,FPY-2011を用いた場合の方がC/E値が1に近い。ただし,129Iと155Euについては,核分裂収率の違いによる計算値の差異よりも実験値と計算値の差異の方が大きい。

Fig. 4

C/E values in analysis of MOX fuel

上記2つのPIE解析の結果から,UO2燃料とMOX燃料のどちらにおいても,Tokyo Techを用いた場合とFPY-2011を用いた場合のFPのC/E値の差異は5%程度以下であった。

IV. C/E値の差異の要因に関する考察

本章では,MOX燃料のPIE解析においてTokyo Techを用いた場合のC/E値とFPY-2011を用いた場合のC/E値に3%以上の差異があった129I,153Eu,154Eu,155Eu,155Gdについて,ORIGEN2の計算で用いている燃焼チェーン上の周辺核種も含めて差異が生じた要因を考察する。また,同様にUO2燃料のPIE解析でC/E値に差異がみられた154Euについても考察する。MOX燃料のPIE解析において考察の対象とした5核種の中に,UO2燃料のPIE解析において考察の対象とした154Euと燃焼チェーンで繋がった153Eu,155Eu,155Gdを含んでいるため,MOX燃料の考察を先に行うことで燃焼チェーン上の核種を含めた詳細な考察を行うことができると考え,UO2燃料よりMOX燃料の考察を先に実施した。Tokyo TechとFPY-2011を用いた場合の計算結果を比較して考察する際,計算結果に伴う統計誤差により差異の傾向が不明確になることを避けるために核種崩壊生成計算コードORIGEN214を用いて,初期組成と燃焼履歴を模擬した簡易的な計算を行った。断面積および崩壊ライブラリは,SWAT4.0と同様にJENDL-4.0に基づくORIGEN2用断面積ライブラリセットORLIBJ40をそのまま用いた。II章の計算条件と同様に,核分裂収率のデータをTokyo TechまたはFPY-2011で置き換えており,ORLIBJ40で扱われていない核種については,FPD-2011の半減期と崩壊分岐比を用いて,ORIGEN2が計算で評価する核種としてORLIBJ40にその核種のデータを新たに追加した。第2励起状態の核種の核分裂収率は崩壊分岐比をかけ合わせた値を分岐先の娘核種の核分裂収率に足し合わせた。

1. MOX燃料のPIE解析においてC/E値に差異がみられた核種

(1) 129I

MOX燃料のPIE解析において,Tokyo TechによるFPY-2011に対する129IのC/E値の差異は3%であった。129Iの生成量の差異に影響した核分裂収率を調べた。129Iの生成経路を確認するため,ORIGEN2の計算で用いている129I周辺の燃焼チェーンをFig. 5に示す。Figure 5より,129Iの生成経路は親核種からの放射性崩壊のみであるから,129Iの生成量には129Iとその親核種の核分裂収率が主に影響することが確認できる。まず,どの核分裂性核種の核分裂収率が主に129Iの生成量に影響しているか確認した。その際,今回のPIE解析の体系で核分裂への寄与割合が高いのは235U,238U,239Pu,241Puの4核種であるため,その4核種について1核種ずつ影響を評価した。FPY-2011を用いたケース(a)と,235U,238U,239Pu,241Puの核分裂収率をそれぞれFPY-2011からTokyo Techに変更したケース(b)の129Iの生成量,両者の相対差(b/a − 1)をTable 1に示す。Table 1より,主に239Puの核分裂収率が129Iの生成量の差異に影響していることがわかる。次に,239Puの核分裂収率について,どのFP核種が主に129Iの生成量に影響しているかを調べた。239PuからFig. 5に示した129Iとその親核種が生成される核分裂収率について,Tokyo TechとFPY-2011の差(Tokyo Tech − FPY-2011(%))をFig. 6に示す。Fig. 6より,129Iとその親核種の中で,129Sn,129mSn,129Sb,129mSbの差が比較的大きく,0.1%を超えることがわかる。このことから,それら4核種の核分裂収率が129Iの生成量に大きく影響すると考えられる。その4核種の核分裂収率を1つずつFPY-2011からTokyo Techに変更した結果および4核種すべてをFPY-2011からTokyo Techに変更した結果をTable 2に示す。核分裂収率を1つずつFPY-2011からTokyo Techに変更した際,崩壊ライブラリにおけるそれらの核種の核分裂収率データをそのままFPY-2011からTokyo Techに置き換えた。Table 2より,129Sn,129mSn,129Sb,129mSbの核分裂収率のいずれを変更した場合もFPY-2011を用いた場合の結果と5%以上または−5%以下の相対差がみられるが,129Sn,129mSn,129Sb,129mSbの核分裂収率すべてを変更した場合の129Iの生成量の相対差は3%である。このことから,129Sn,129Sbの核分裂収率を変更したことによって129Iの生成量が増加する効果と,129mSn,129mSbの核分裂収率を変更したことによって129Iの生成量が減少する効果が打ち消しあい,129Iの生成量は3%の相対差となったと考えられる。

Fig. 5

Burnup chain around 129I

Table 1 Production of 129I and relative difference in case of changing fission yield of fissile nuclides
  FPY-2011a) 235Ub) 238Ub) 239Pub) 241Pub)
Production of 129I (g/tIHM) 3.28 × 102 3.28 × 102 3.28 × 102 3.37 × 102 3.29 × 102
Relative difference (%) 0 0 3 1

a) FPY-2011 is used for all fission yields.

b) Tokyo Tech is used for only the fission yield of 235U, 238U, 239Pu, or 241Pu. FPY-2011 is used for the others.

Fig. 6

Fission yield of nuclides of atomic number 129 produced from 239Pu

Table 2 Production of 129I and relative difference in case of changing fission yield of FP nuclides
  FPY-2011a) 129Snb) 129mSnb) 129Sbb) 129mSbb) 129Sn∼129mSbc)
Production of 129I (g/tIHM) 3.28 × 102 3.69 × 102 2.78 × 102 3.61 × 102 3.10 × 102 3.36 × 102
Relative difference (%) 13 −15 10 −5 3

a) FPY-2011 is used for all fission yields.

b) Tokyo Tech is used for only the fission yield of 129Sn, 129mSn, 129Sb, or 129mSb produced from 239Pu. FPY-2011 is used for the others.

c) Tokyo Tech is used for only the fission yield of 129Sn, 129mSn, 129Sb, and 129mSb produced from 239Pu. FPY-2011 is used for the others.

(2) 153Eu

MOX燃料のPIE解析において,Tokyo TechによるFPY-2011に対する153EuのC/E値の差異は−5%みられた。153Euの生成量の差異に影響した核分裂収率を調べた。153Euの生成経路を確認するため,ORIGEN2の計算で用いている153Eu周辺の燃焼チェーンをFig. 7に示す。Fig. 7より,153Euの生成経路は153Smからのβ崩壊および152Euの中性子捕獲反応であることがわかる。153Smのβ崩壊と152Euの中性子捕獲反応のどちらが153Euの生成経路として寄与が高いかを確認するため,断面積ライブラリにおける152Euの1群捕獲断面積を0にすることによって152Euから153Euへの生成経路を遮断した計算を行った結果をTable 3に示す。Table 3の結果から,152Euから153Euへの生成経路を遮断しても153Euの生成量はほとんど変わらず,153Euの生成経路は153Smのβ崩壊が支配的であることがわかる。153Smに着目すると,Fig. 7より,153Pmのβ崩壊による生成経路と152Smの中性子捕獲反応による生成経路があることがわかる。ここで,どちらの生成経路が支配的か確認するために152Smの1群捕獲断面積を0にした計算とβ崩壊の分岐比を0にすることによって153Pmから153Smへのβ崩壊を遮断した計算の結果をTable 4に示す。Table 4より,153Euの生成量は152Smの中性子捕獲反応を遮断することにより75%減少し,親核種のβ崩壊を遮断することで24%減少することがわかる。したがって,152Smおよび153Sm,それらの親核種の核分裂収率が153Euの生成量に影響すると考えられる。

Fig. 7

Burnup chain around 153Eu

Table 3 Production of 153Eu and relative difference in case capture cross section of 152Eu is 0
  Basea) Capture cross section
of 152Eu is 0b)
Production of 153Eu
(g/tIHM)
2.79 × 102 2.78 × 102
Relative difference
(%)
0

a) FPY-2011 is used for all fission yields.

b) FPY-2011 is used for all fission yields and capture cross section of 152Eu in cross section library is changed to 0.

Table 4 Production of 153Eu and relative difference in case capture cross section of 152Sm is 0 or β decay from 153Pm to 153Sm is cut off
  Basea) Capture cross
section of
152Sm is 0b)
β decay from 153Pm to 153Sm is cut offc)
Production of 153Eu
(g/tIHM)
2.79 × 102 6.86 × 101 2.11 × 102
Relative difference
(%)
−75 −24

a) FPY-2011 is used for all fission yields.

b) FPY-2011 is used for all fission yields and capture cross section of 152Eu in cross section library is changed to 0.

c) FPY-2011 is used for all fission yields and β decay from 153Pm to 153Sm is cut off by changing 153Pm in decay library to stable nuclide.

152Smおよび153Sm,それらの親核種のどの核分裂収率が主に153Euの生成量に影響するかについて調べた。152Smと153Smの親核種は,半減期が数秒~数分と短いため,核分裂や崩壊によって生成してすぐに安定核種である152Smや,半減期が約2日である153Smになる。そのため,152Smと153Smの親核種の核分裂収率をそれぞれ152Smと153Smの核分裂収率に足し合わせて累積収率とすることで,152Smと153Smのどちらの累積収率が153Euの生成量に影響するかについて調べた。Tokyo TechとFPY-2011における各核分裂性核種の152Smの累積収率をTable 5153Smの累積収率をTable 6に示す。Table 5より,152Smの累積収率について,Tokyo TechとFPY-2011の相対差は最大でも1%と小さい。一方,Table 6をみると,153Smの累積収率はどの核分裂性核種においても相対差が-20%と大きい。そのため,前述のように152Smの中性子捕獲による153Smの生成量に比べてβ崩壊による153Smの生成量は小さいが,核分裂収率の違いによる153Euの生成量への影響は親核種のβ崩壊による153Smの生成の方が大きいと考えられる。したがって,153Smおよびβ崩壊により153Smになる核種の核分裂収率が主に153Euの生成量へ影響していると考えられる。次に,どの核分裂性核種の核分裂収率が主に影響しているか確認するため,153Smとβ崩壊して153Smになる核種の核分裂収率すべてについて,核分裂性核種ごとにFPY-2011からTokyo Techへ変更して計算を行った。FPY-2011を用いたケース(a)と235U,238U,239Pu,241Puの核分裂収率をFPY-2011からTokyo Techにそれぞれ変更したケース(b)の153Euの生成量,両者の相対差(b/a − 1)をTable 7に示す。Table 7より,239Puおよび241Puの核分裂収率を変更したケースとすべてFPY-2011を用いたケースとの相対差は−2%以上であった。さらに,239Puおよび241Puの核分裂収率について,どのFP核種が主に153Euの生成量に影響しているかを調べた。239Puおよび241Puから質量数153の核種が生成される核分裂収率について,Tokyo TechとFPY-2011の差(Tokyo Tech − FPY-2011(%))をFig. 8に示す。Figure 8より,239Puから153Ndができる核分裂収率,241Puから153Prおよび153Ndができる核分裂収率の差が−0.04%以上と比較的大きいため,それらの核分裂収率が153Euの生成量に大きく影響すると考えられる。それら3核種の核分裂収率を1つずつFPY-2011からTokyo Techに変更した結果とそれら3核種すべての核分裂収率を変更した結果をTable 8に示す。Table 8より,239Puから153Ndができる核分裂収率を変更したケースの153Euの生成量の相対差は−2%であり,Table 7で示した239Puから質量数153の核種ができる核分裂収率を変更したケースの153Euの生成量の相対差−2%と同程度であることがわかる。また,241Puから153Prおよび153Ndができる核分裂収率を変更したケースの153Euの生成量の相対差の合計は−2%であり,Table 7で示した241Puから質量数153の核種ができる核分裂収率を変更したケースの153Euの生成量の相対差である−2%と同程度であることがわかる。それら3核種の核分裂収率すべてを変更したケースの153Euの生成量の相対差は−4%であることから,前章で示した153EuのC/E値の差異である−5%には,239Puから153Ndができる核分裂収率,241Puから153Prおよび153Ndができる核分裂収率が主に影響していることがわかった。

Table 5 Cumulative fission yield of 152Sm
Fissile nuclildes 235U 238U 239Pu 241Pu
Tokyo Tech (I) (%) 2.67 × 101 5.31 × 101 5.76 × 101 7.19 × 10−1
FPY-2011 (II) (%) 2.67 × 101 5.31 × 101 5.68 × 101 7.18 × 10−1
Relative difference
((I/II-1) × 100) (%)
0 0 1 0

Table 6 Cumulative fission yield of 153Sm
Fissile nuclildes 235U 238U 239Pu 241Pu
Tokyo Tech (I) (%) 1.27 × 101 3.32 × 101 2.89 × 101 4.33 × 101
FPY-2011 (II) (%) 1.58 × 101 4.16 × 101 3.61 × 101 5.40 × 101
Relative difference
((I/II-1) × 100) (%)
−20 −20 −20 −20

Table 7 Production of 153Eu and relative difference in case of changing fission yield of fissile nuclides
  FPY-2011a) 235Ub) 238Ub) 239Pub) 241Pub)
Production of 153Eu (g/tIHM) 2.79 × 102 2.79 × 102 2.79 × 102 2.73 × 102 2.73 × 102
Relative difference (%) 0 0 −2 −2

a) FPY-2011 is used for all fission yields.

b) Tokyo Tech is used for only the fission yield of 235U, 238U, 239Pu, or 241Pu. FPY-2011 is used for the others.

Fig. 8

Fission yield of nuclides of atomic number 153 produced from 239Pu and 241Pu

Table 8 Production of 153Eu and relative difference in case of changing fission yield of FP nuclides
  FPY-2011a) 239Pu-153Ndb) 241Pu-153Prb) 241Pu-153Ndb) 3 nuclidesc)
Production of 153Eu (g/tIHM) 2.79 × 102 2.74 × 102 2.77 × 102 2.76 × 102 2.68 × 102
Relative difference (%) −2 −1 −1 −4

a) FPY-2011 is used for all fission yields.

b) Tokyo Tech is used for only the fission yield of 153Nd produced from 239Pu, 153Pr produced from 241Pu, and 153Nd produced from 241Pu. FPY-2011 is used for the others.

c) Tokyo Tech is used for only the fission yield of 153Nd produced from 239Pu, 153Pr produced from 241Pu, or 153Nd produced from 241Pu. FPY-2011 is used for the others.

(3) 154Eu

MOX燃料のPIE解析において,Tokyo TechによるFPY-2011に対する154EuのC/E値の差異は−4%であった。154Euの生成量の差異に影響した核分裂収率を調べた。Fig. 7より,154Euの生成経路は154mEuからの核異性体転移および153Euの中性子捕獲反応であることがわかる。さらに,153Euの1群捕獲断面積を0にして153Euから154Euへの生成経路を遮断した計算を行った結果をTable 9に示す。Table 9をみると,153Euから154Euへの生成経路を遮断すると154Euの生成量は5桁減少している。このことから,154mEuの核異性体転移や核分裂による154Euの生成より153Euの中性子捕獲反応が支配的であることがわかる。したがって,154mEuと154Euの核分裂収率よりも,153Euの親核種の核分裂収率による153Euの生成量の差異が154Euの生成量の差異に主に影響していると考えられる。153Euの考察の際と同様に,どの核分裂性核種の核分裂収率が主に影響しているか確認するため,質量数153の核種の核分裂収率すべてについて核分裂性核種ごとにFPY-2011からTokyo Techへ変更した計算を行った。すべてFPY-2011を用いたケース(a)と,FPY-2011から235U,238U,239Pu,241Puの核分裂収率にそれぞれ変更したケース(b)の154Euの生成量,両者の相対差(b/a − 1)をTable 10に示す。Table 10より,153Euの考察の際と同様に,239Puおよび241Puの核分裂収率を変更したケースにおいて−2%以上の相対差がみられた。また,Fig. 8より,239Puから153Ndができる核分裂収率と241Puから153Prおよび153Ndができる核分裂収率は,Tokyo TechとFPY-2011の差が大きいことがわかっている。それらの核分裂収率を1つずつFPY-2011からTokyo Techに変更した結果とそれら3核種すべての核分裂収率を変更した結果をTable 11に示す。Table 11より,3核種の核分裂収率すべてを変更したケースの154Euの生成量の相対差は−5%であることから,前章で示した154EuのC/E値の差異である−4%には,239Puから153Ndができる核分裂収率,241Puから153Prおよび153Ndができる核分裂収率が主に影響していることが確認された。

Table 9 Production of 154Eu and relative difference in case capture cross section of 153Eu is 0
  Basea) Capture cross section
of 153Eu is 0b)
Production of 154Eu
(g/tIHM)
6.51 × 101 6.31 × 10−4
Relative difference
(%)
−100

a) FPY-2011 is used for all fission yields.

b) FPY-2011 is used for all fission yields and capture cross section of 153Eu in cross section library is changed to 0.

Table 10 Production of 154Eu and relative difference in case of changing fission yield of fissile nuclides
  FPY-2011a) 235Ub) 238Ub) 239Pub) 241Pub)
Production of 154Eu (g/tIHM) 6.51 × 101 6.51 × 101 6.49 × 101 6.33 × 101 6.36 × 101
Relative difference (%) 0 0 −3 −2

a) FPY-2011 is used for all fission yields.

b) Tokyo Tech is used for only the fission yield of 235U, 238U, 239Pu, or 241Pu. FPY-2011 is used for the others.

Table 11 Production of 154Eu and relative difference in case of changing fission yield of FP nuclides
  FPY-2011a) 239Pu-153Ndb) 241Pu-153Prb) 241Pu-153Ndb) 3 nuclidesc)
Production of 154Eu (g/tIHM) 6.51 × 101 6.36 × 101 6.45 × 101 6.43 × 101 6.21 × 101
Relative difference (%) −2 −1 −1 −5

a) FPY-2011 is used for all fission yields.

b) Tokyo Tech is used for only the fission yield of 153Nd produced from 239Pu, 153Pr produced from 241Pu, and 153Nd produced from 241Pu. FPY-2011 is used for the others.

c) Tokyo Tech is used for only the fission yield of 153Nd produced from 239Pu, 153Pr produced from 241Pu, or 153Nd produced from 241Pu. FPY-2011 is used for the others.

(4) 155Eu

MOX燃料のPIE解析において,Tokyo TechによるFPY-2011に対する155EuのC/E値の差異は−4%であった。155Euの生成量の差異に影響した核分裂収率を調べた。Fig. 7より,155Euの生成経路は155Smからのβ崩壊および154Euの中性子捕獲反応であることがわかる。さらに,154Euの1群捕獲断面積を0にして154Euから155Euへの生成経路を遮断した計算の結果をTable 12に示す。Table 12より,154Euから155Euへの生成経路を遮断すると155Euの生成量は88%減少しており,154Euの中性子捕獲反応が支配的であることがわかる。前述のように154Euの生成量の違いは主に153Euの親核種の核分裂収率が影響していることがわかっている。したがって,154Euからの生成が支配的な155Euにおいても同様に,153Euの親核種の核分裂収率が主に影響していると考えられる。153Euの生成量に主に影響を及ぼす239Puから153Ndができる核分裂収率,241Puから153Prおよび153Ndができる核分裂収率を1つずつFPY-2011からTokyo Techに変更した結果とそれら3核種すべての核分裂収率を変更した結果をTable 13に示す。Table 13より,3核種の核分裂収率すべてを変更したケースの155Euの生成量の相対差が−4%であることから,前章で示した155EuのC/E値の差異である−4%には,154Euと同様に,239Puから153Ndができる核分裂収率,241Puから153Prおよび153Ndができる核分裂収率が主に影響していることが確認された。

Table 12 Production of 155Eu and relative difference in case capture cross section of 154Eu is 0
  Basea) Capture cross section
of 154Eu is 0b)
Production of 155Eu
(g/tIHM)
1.95 × 101 2.31 × 100
Relative difference
(%)
−88

a) FPY-2011 is used for all fission yields.

b) FPY-2011 is used for all fission yields and capture cross section of 153Eu in cross section library is changed to 0.

Table 13 Production of 155Eu and relative difference in case of changing fission yield of FP nuclides
  FPY-2011a) 239Pu-153Ndb) 241Pu-153Prb) 241Pu-153Ndb) 3 nuclidesc)
Production of 155Eu (g/tIHM) 1.95 × 101 1.91 × 101 1.93 × 101 1.93 × 101 1.87 × 101
Relative difference (%) −2 −1 −1 −4

a) FPY-2011 is used for all fission yields.

b) Tokyo Tech is used for only the fission yield of 153Nd produced from 239Pu, 153Pr produced from 241Pu, and 153Nd produced from 241Pu. FPY-2011 is used for the others.

c) Tokyo Tech is used for only the fission yield of 153Nd produced from 239Pu, 153Pr produced from 241Pu, or 153Nd produced from 241Pu. FPY-2011 is used for the others.

(5) 155Gd

MOX燃料のPIE解析において,Tokyo TechによるFPY-2011に対する155GdのC/E値の差異が−4%であった。155Gdの生成量の差異に影響した核分裂収率を調べた。Fig. 7より,155Gdの生成経路は155Euからのβ崩壊および154Gdの中性子捕獲反応であることがわかる。154Gdの生成経路はFig. 7より,主に154Euからのβ崩壊であることがわかる。154Euや155Euの生成量の違いは前述したように,主に153Euの親核種の核分裂収率が影響していることがわかっている。したがって,それらの核種から生成される155Gdにおいても同様に,153Euの親核種の核分裂収率が主に影響していると考えられる。そこで,153Euの生成量に主に影響を及ぼす239Puから153Ndができる核分裂収率,241Puから153Prおよび153Ndができる核分裂収率を1つずつFPY-2011からTokyo Techに変更した結果と3核種すべての核分裂収率を変更した結果をTable 14に示す。Table 14より,3核種の核分裂収率すべてを変更したケースの155Gdの生成量の相対差が−5%であることから,前章で示した155GdのC/E値の差異である−4%には,239Puから153Ndができる核分裂収率,241Puから153Prおよび153Ndができる核分裂収率が主に影響していることが確認された。

Table 14 Production of 155Gd and relative difference in case of changing fission yield of FP nuclides
  FPY-2011a) 239Pu-153Ndb) 241Pu-153Prb) 241Pu-153Ndb) 3 nuclidesc)
Production of 155Gd (g/tIHM) 2.78 × 10−1 2.71 × 10−1 2.76 × 10−1 2.75 × 10−1 2.65 × 10−1
Relative difference (%) −3 −1 −1 −5

a) FPY-2011 is used for all fission yields.

b) Tokyo Tech is used for only the fission yield of 153Nd produced from 239Pu, 153Pr produced from 241Pu, and 153Nd produced from 241Pu. FPY-2011 is used for the others.

c) Tokyo Tech is used for only the fission yield of 153Nd produced from 239Pu, 153Pr produced from 241Pu, or 153Nd produced from 241Pu. FPY-2011 is used for the others.

2. UO2燃料のPIE解析においてC/E値に差異がみられた核種

(1) 154Eu

UO2燃料のPIE解析において,Tokyo TechによるFPY-2011に対する154EuのC/E値の差異が−5%であった。154Euの生成量の差異に影響した核分裂収率を調べた。MOX燃料のPIE解析の考察においても確認したように,Fig. 7より154Euの生成経路は154mEuからの核異性体転移および153Euの中性子捕獲反応である。前述したMOX燃料のPIE解析においては,154Euの生成経路は153Euの中性子捕獲反応が支配的であったが,今回のUO2燃料のPIE解析においても同様であるかを確認した。153Euの1群捕獲断面積を0にすることで153Euから154Euへの生成経路を遮断して計算を行った結果をTable 15に示す。Table 15より,153Euから154Euへの生成経路を遮断すると154Euの生成量は5桁減少していることから,UO2燃料体系においても153Euの中性子捕獲反応が支配的であることがわかる。したがって,153Euの親核種の核分裂収率による153Euの生成量の差異が154Euの生成量の差異に影響していると考えられる。次に,どの核分裂性核種の核分裂収率が主に影響しているか確認するため,153Euおよびその親核種の核分裂収率すべてについて核分裂性核種ごとにFPY-2011からTokyo Techへ変更した計算を実施した。質量数153の核種について,すべてFPY-2011を用いたケース(a)と235U,238U,239Pu,241Puの核分裂収率をFPY-2011からTokyo Techにそれぞれ変更したケース(b)の153Euの生成量,両者の相対差(b/a − 1)をTable 16に示す。Table 16より,235Uおよび239Puの核分裂収率を変更したケースにおいてそれぞれ−2%以上と比較的大きな相対差がみられた。さらに,235Uおよび239Puについて,どのFP核種が主に154Euの生成量の差異に影響しているかについて調べた。235Uから質量数153の核種ができる核分裂収率について,Tokyo TechとFPY-2011の差(Tokyo Tech − FPY-2011(%))をFig. 9に示す。Fig. 9より,153Euとその親核種の中で,Tokyo TechとFPY-2011における153Ndの核分裂収率の差が−0.03%と比較的大きいことがわかる。また,Fig. 8より,239Puについても,153Ndの核分裂収率が153Euの生成量に主に影響すると考えられる。そこで,235Uまたは239Puから153Ndができる核分裂収率をFPY-2011からTokyo Techに変更した結果と235Uおよび239Puから153Ndができる核分裂収率を2つとも変更した結果をTable 17に示す。Table 17より,235Uおよび239Puから153Ndができる核分裂収率を変更したケースの154Eu生成量の相対差はそれぞれ−2%であり,Table 16で示した235Uまたは239Puから質量数153の核種ができる核分裂収率を変更したケースの相対差と同程度であることがわかる。また,2核種の核分裂収率をともに変更したケースの154Euの生成量の相対差が−4%であることから,前章で示した154EuのC/E値の差異である−5%には,主に235Uおよび239Puから153Ndができる核分裂収率が影響していることがわかった。

Table 15 Production of 154Eu and relative difference in case capture cross section of 153Eu is 0
  Basea) Capture cross section
of 153Eu is 0b)
Production of 154Eu
(g/tIHM)
1.73 × 101 2.99 × 10−4
Relative difference
(%)
−100

a) FPY-2011 is used for all fission yields.

b) FPY-2011 is used for all fission yields and capture cross section of 153Eu in cross section library is changed to 0.

Table 16 Production of 154Eu and relative difference in case of changing fission yield of fissile nuclides
  FPY-2011a) 235Ub) 238Ub) 239Pub) 241Pub)
Production of 154Eu (g/tIHM) 1.73 × 101 1.69 × 101 1.71 × 101 1.68 × 101 1.72 × 101
Relative difference (%) −2 −1 −2 −1

a) FPY-2011 is used for all fission yields.

b) Tokyo Tech is used for only the fission yield of 235U, 238U, 239Pu, or 241Pu. FPY-2011 is used for the others.

Fig. 9

Fission yield of nuclides of atomic number 153 produced from 235U

Table 17 Production of 154Eu and relative difference in case of changing fission yield of FP nuclides
  FPY-2011a) 235U-153Ndb) 239Pu-153Ndb) 235U-153Nd 239Pu-153Ndc)
Production of 154Eu (g/tIHM) 1.73 × 101 1.69 × 101 1.69 × 101 1.65 × 101
Relative difference (%) −2 −2 −4

a) FPY-2011 is used for all fission yields.

b) Tokyo Tech is used for only the fission yield of 153Nd produced from 235U or 239Pu. FPY-2011 is used for the others.

c) Tokyo Tech is used for only the fission yield of 153Nd produced from 235U and 239Pu. FPY-2011 is used for the others.

V. 結論

Tokyo Techの妥当性確認のため,UO2燃料およびMOX燃料のPIE解析を行った。UO2燃料を用いた福島第二原子力発電所2号機およびMOX燃料を用いたBeznau-1号炉のPIE解析の結果,Tokyo TechおよびFPY-2011を用いた場合のC/E値の差異は5%程度以下であり,軽水炉の照射後燃料における本研究で対象としたPIEの測定核種を対象とする場合,Tokyo Techの妥当性について,FPY-2011と同等であることが確認された。UO2燃料のPIE解析については,154EuのC/E値の差異は5%程度であり,FPY-2011を用いた場合の方がC/E値が1に近い。C/E値の差異に着目したところ,主に235Uおよび239Puから153Ndができる核分裂収率の違いが154EuのC/E値の差異に影響していることがわかった。なお,FPY-2011およびTokyo Techを用いた場合のどちらのC/E値も実験誤差の範囲内である。MOX燃料については,154Euおよび155GdについてはC/E値の改善がみられ,実験値とよく一致しているが,129I,153Eu,155EuについてはFPY-2011を用いた場合の方がC/E値が1に近い。ただし,129Iと155Euについては,核分裂収率データの違いによる計算値の差異よりも実験値と計算値の差異の方が大きい。主に239Puから129Sn,129mSn,129Sb,129mSbができる核分裂収率の違いが129Iの生成量の差異に影響し,主に239Puから153Nd,241Puから153Prおよび153Ndができる核分裂収率の違いが153Euおよび155Euの生成量の差異に影響していることがわかった。また,主に239Puから153Nd,241Puから153Prおよび153Ndができる核分裂収率の違いが,154Euおよび155GdのC/E値の改善に影響していることがわかった。

References
 
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