大気汚染学会誌
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自動車における多環芳香族炭化水素の平均排出量と平均既走行距離の関係
半田 隆山村 堯樹加藤 義洋斉藤 昭一郎石井 忠浩
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1979 年 14 巻 2 号 p. 53-61

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抄録

自動車排ガス中には発癌性を示すベンゾ (a) ピレンをはじめとして多数の多環芳香族炭化水素(PAH)が含まれており, それらは大気PAHの主な汚染源の一つである。従って大気PAHの汚染源解明の一環として自動車からのPAH排出状況を把握することは急務と思われる。本論述は, 現在一般に使用されている代表的国産車26台について試験走行を行い, 既走行距離15,000kmから95,000kmまでを20,000km毎に4区分し, 各区分におけるPAH排出量の分布を調べると同時に, 既走行距離の増加に伴うPAH排出量の推移を調べた結果である。
各区分におけるPAH排出量の分布は既走行距離の増加に伴って大きくなった。一台一台の車についてみると, 既走行距離に対するPAH排出量の推移は各車様々な様相を示した。しかし各区分における平均PAH排出量は平均既走行距離に対して直線的に増加した又平均エンジン油消費率も平均既走行距離に対して直線的に増加した。即ち, 既走行距離に対するPAH排出量の増加は既走行距離の増加に伴うエンジンの劣化に基づいた油消費率の増大に起因すると思われた。
ある距離を使用されたエンジン油では,車からのPAH排出量はその新しい時に比べて増大することが認められた。これは油の使用に伴う油粘度の低下により油消費率が増大することと, 油の中に蓄積したPAHの寄与によると考えられた。

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